グルカゴンは主として膵α細胞で産生され,α細胞はグルコース濃度低下を検知し,KATPチャネルを介してグルカゴンを分泌する。主に肝でのグリコーゲン分解亢進と糖新生亢進により血糖を上昇させる。
SGLT2阻害薬は腎臓の近位尿細管に作用し血糖値を低下させるが,SGLT2阻害薬の投与により血中グルカゴン濃度が上昇することが報告されている。ダパグリフロジン投与群ではプラセボ群に対して空腹時血糖値が低下しているにもかかわらず,有意に内因性の肝糖産生が増加し,同時に血中グルカゴン濃度も有意に増加したとの報告(文献1)があり,エンパグリフロジン投与群でも同様の報告(文献2)がある。
SGLT2阻害薬によるグルカゴン濃度増加のメカニズムは現在のところ不明であるが,尿中に排出されたグルコースを補うため,代償的にグルカゴン分泌を促進させていると推測できる。また,α細胞にSGLT2が発現しており,SGLT2阻害薬が直接α細胞に作用してグルカゴン分泌を増加させているという仮説も提唱されている。
臨床での応用として,グルカゴン抑制効果を持つインクレチン関連薬とSGLT2阻害薬を併用することで,より安定した血糖降下作用がもたらされる可能性がある。
1) Merovci A, et al:J Clin Invest. 2014;124(2):509-14.
2) Ferrannini E, et al:J Clin Invest. 2014;124(2):499-508.