糖尿病腎症の旧病期分類では主症候であるアルブミン尿の多寡で病期を決定していた。このため,正常アルブミン尿でeGFR値が低下した症例では病期分類に当てはめることができず,リスク評価が困難であった。そこで,アルブミン尿増加とeGFR値低下の双方が末期腎不全のリスクとなることを反映した病期分類が求められていた。
2013年12月に改訂された新しい病期分類では,腎機能の指標としてeGFR値を取り入れた。正常アルブミン尿を第1期(腎症前期)として,微量アルブミン尿を第2期(早期腎症期),顕性アルブミン尿あるいは持続性蛋白尿を第3期(顕性腎症期)とした。そして,アルブミン尿を問わずeGFR値30未満を第4期(腎不全期)と定義した。第5期は透析療法期である(文献1)。アルブミン尿とeGFR値の2つの指標を組み合わせることでCKD重症度分類との整合性を持たせるとともに,リスクの層別化を可能にした。
eGFR値30未満を腎不全期と定義するようになった背景には,リスクと相関を持たせるようになったことが挙げられる。日本人の糖尿病腎症患者を対象とした研究で,eGFR値が30未満になると末期腎不全への進展や全死亡のリスクが急激に上昇することが示されたからである(文献2)。新病期分類によって,糖尿病患者の腎機能とリスク評価が適切に行われることが期待されている。
1) 日本糖尿病学会, 他:糖尿病. 2014;57(7):529-34.
2) Wada T, et al:Clin Exp Nephrol. 2014;18(4):613-20.