「医師による共感が、糖尿病患者のヘモグロビンA1cやLDLコレステロールの値に影響する」─。米国トーマスジェファーソン大学のM・ホジャット氏が3日、医師・患者間の共感や心の交流を巡る野口医学研究所主催のセミナーで講演し、米国などの研究結果を紹介した。
ホジャット氏らの研究グループは、「ジェファーソン共感尺度(Jefferson Scale of Physician Empathy)」のスコアで医師29人の共感度を高、中、低に分け、医師らが診療していた糖尿病患者891人について、HbA1cやLDLコレステロールの値を比較。共感度が低い医師でHbA1cの値が7%未満の患者は40%だったのに対し、共感度が高い医師では56%だった。またLDLコレステロールの値が100未満の患者は、共感度が低い医師で44%、高い医師では59%だった。
ホジャット氏はまた、医師242人、糖尿病患者2万961人を対象としたイタリアの研究も紹介。糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群、昏睡等の急性代謝性合併症の発生率は、共感度の低い医師で患者1000人中6.5人、高い医師で4人だったとした。
セミナーでは佐野潔氏(地域家庭医療総合センター)も講演し、「医療の価値観を延命や経済効率、利益性等に集約させてしまうと、医療の本質を見失う」と指摘。満足度や快適性、幸福度といった人間主体の要素を取り入れることが必須だと強調した。