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ホジキンリンパ腫の分子病態 【HRS細胞の生存に関与する分子としてPD-1が注目を集めている】

No.4836 (2016年12月31日発行) P.55

田丸淳一 (埼玉医科大学総合医療センター病理部(病理診断科)教授)

登録日: 2016-12-27

最終更新日: 2016-12-19

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ホジキンリンパ腫は,Bリンパ球に由来するHodgkin/Reed-Sternberg(HRS)細胞のクローナルな増殖である。このHRS細胞の生存や増殖には,NF-κBやJAK-STAT経路の恒常的な活性化が重要であることが証明されており,これらの経路を制御する遺伝子の異常がいくつもわかってきた。経路の恒常的な活性化により,サイトカイン,ケモカインなどの産生を促し,HRS細胞自身が生存しやすい環境をつくっているのであろうと考えられ,様々な炎症性背景に絶対数の少ない腫瘍細胞からなる特異な組織像の説明がなされている。

近年,HRS細胞の生存に関与する分子としてPD-1が注目されている。HRS細胞の周囲にはT細胞のロゼットが認められることは以前より知られていたが,その多くにPD-1の発現が認められる。また,興味深いことに本疾患の結節硬化型では9p24.1の増幅とともに,PD-L1,PD-L2の発現が増している1)。さらにMHC classⅡ trans­activatorであるCIITAの関与する転座がみられ,この転座パートナーとしてPD-L1やPD-L2がある2)。HRS細胞にこれらが発現することによって,T細胞の抗腫瘍免疫をより抑制すると考えられる。そして,PD-1阻害薬が奏効するという臨床的な事実も蓄積されつつある3)

【文献】

1) Green MR, et al:Blood. 2010;116(17):3268-77.

2) Steidl C, et al:Nature. 2011;471(7338):377-81.

3) Ansell SM, et al:N Engl J Med. 2015;372(4): 311–9.

【解説】

田丸淳一 埼玉医科大学総合医療センター 病理部(病理診断科)教授

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