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妊娠中の臍帯異常診断の臨床的意義 【良質な分娩管理に有用。分娩前の超音波像と分娩中の胎児心拍数図を総合的に判断】

No.4836 (2016年12月31日発行) P.60

亀井良政 (埼玉医科大学病院産科教授)

長谷川潤一 (聖マリアンナ医科大学産婦人科学准教授)

登録日: 2016-12-28

最終更新日: 2016-12-19

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  • 妊娠中の臍帯異常診断の臨床的意義について,聖マリアンナ医科大学・長谷川潤一先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    亀井良政 埼玉医科大学病院産科教授


    【回答】

    妊娠・分娩中における胎児のトラブルの原因として,臍帯異常が占める割合はかなり大きいです。臍帯は胎児の唯一の命綱であり,それに派生する問題は重篤な胎児予後と深く関連します。緊急帝王切開の適応となる臍帯異常が3割,胎盤異常が2割,羊水過少が1割あると言われています。臍帯異常の内訳は,臍帯過捻転,臍帯の胎盤の付着部異常である卵膜付着,臍帯脱出などが多くみられます。

    母体には元来,大事な臍帯の中を流れる臍帯血管を守るための生理的なメカニズムが,多数備わっています。そもそも胎児・臍帯が羊水中に存在するのは,それらの可動性を良くし,圧迫を避けるためです。臍帯血管を取り囲むワルトン膠質は,その弾力性によって,胎児に酸素・栄養を送る臍帯血流の圧迫による遮断を防ぐために存在します。臍帯の生理的な捻転は,可動性を損なわず,牽引や圧迫,捻転などの外力を防ぎ,臍帯血流への影響を緩和する働きを持っています。また2本の臍帯動脈は,胎児から胎盤への循環を安定させるためにあると考えられています。これらの防御機構が壊れてしまった場合,胎児に問題が起きる可能性が高くなります。

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