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母体救命・蘇生シミュレーションの重要性【妊産婦の急変に対して適切な対応をすることにより,死亡数の減少につなげる】

No.4840 (2017年01月28日発行) P.59

長谷川潤一 (聖マリアンナ医科大学産婦人科学准教授)

仲村将光 (昭和大学医学部産婦人科学講座)

登録日: 2017-01-26

最終更新日: 2017-01-24

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  • 母体救命・蘇生シミュレーションの重要性について,昭和大学・仲村将光先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    長谷川潤一 聖マリアンナ医科大学産婦人科学准教授


    【回答】

    わが国の妊産婦死亡は30年前に比べると,出生数10万に対して約16人から約5人と,1/3以下に減少しています。しかし近年においても,100万の出生数に対し約50人の妊産婦が亡くなっています。妊産婦死亡が減少してきた理由として,施設分娩の増加やハイリスク症例を高次施設で管理するようになったことが,挙げられます。

    では,ハイリスク症例とみなされた妊産婦を高次施設へ紹介すれば,妊産婦死亡は回避できるのでしょうか。2010年から行われている妊産婦死亡症例評価検討委員会〔厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)池田班〕において検討した妊産婦死亡事例の半数以上は,高次施設への搬送が必要でした。つまり,妊産婦の急変時に救命・蘇生処置を行うには,自施設では医療資源やマンパワー不足で,より高度な救命・蘇生処置が必要であると判断された事例が多いということです。

    死亡事例は氷山の一角であり,救命された症例も少なくないと推察されます。妊産婦の急変は日常的には発生しませんし,比較的リスクが低いと事前に判断される普通の症例にも起こるため,予測は困難であると思われます。このように,通常の妊婦に突然発生する急変に常日頃から備えるため,妊産婦の救命・蘇生シミュレーションは重要であると考えられます。

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