日本消化器病学会の「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」では,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の長期治療戦略が大きく変更されました。重症GERDでは症状に関係なく,合併症(狭窄,出血)の予防のために積極的な維持療法が提案されていますが,軽症GERDではon demand療法または継続的な維持療法が提案されています。on demand療法はどのような軽症GERD患者に行えばよいのでしょうか。また,どのような処方を行えばよいか,順天堂大学附属静岡病院・永原章仁先生に教えて頂きたいと思います。
【質問者】
岩切勝彦 日本医科大学消化器内科学教授
日本人のびらん性GERDは増加しており,有病率は約10%と推定されています。その多くは軽症であり,軽症びらん性GERDは消化器内科医のみならず,診療科を問わず実地臨床でしばしば遭遇するありふれた疾患であると言えます。びらん性GERDでは,維持療法の前に初期治療をしっかり行う必要があります。プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive acid blocker:P-CAB)といった酸分泌抑制薬を処方すると,多くの患者で症状は1~2週間以内に軽快しますが,食道粘膜びらんの治癒のためには4週ないし8週間の治療が必要です。すなわち,症状軽快と粘膜治癒までの期間に乖離があるのです。したがって,初期治療ではon demand療法は適応になりません。症状が消失したあとも内服を中断しないよう,服薬指導を行うことが大切です。
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