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ELISA法によるGAD抗体測定結果を用いた新規緩徐進行1型糖尿病患者の診断・治療方針 【ELISA法でGAD抗体陽性例はCPR値,陰性例でもIA-2抗体などの膵島自己抗体も測定し,介入もしくは経過観察が必要】

No.4843 (2017年02月18日発行) P.59

植木浩二郎 (国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長)

小林哲郎 (冲中記念成人病研究所所長)

登録日: 2017-02-15

最終更新日: 2017-02-14

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  • GAD抗体の測定により,2型糖尿病と診断されていた患者の中に,多くの緩徐進行1型糖尿病患者が含まれていることが明らかとなっており,このような患者に対しては,膵β細胞保護を目的とするインスリン治療などが推奨されてきました。ところが,GAD抗体の測定法がRIA法からELISA法に変更になり,従来の,GAD抗体の測定値に基づく緩徐進行1型糖尿病の診断や治療の方針決定ができなくなってしまいました。現時点での,ELISA法による測定値を用いた新規緩徐進行1型糖尿病患者の診断や治療方針を決定する際の原則をご教授下さい。
    冲中記念成人病研究所・小林哲郎先生にお願いします。

    【質問者】

    植木浩二郎 国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター長


    【回答】

    グルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)抗体は緩徐進行1型糖尿病の診断に重要なマーカーです。最近GAD抗体の測定がradioimmunoassay(RIA)法からenzyme-linked immuno sorbent assay(ELISA)法に変更され,従来陽性であったものが陰性と判定される例(陰性化例)があることが判明しました。臨床現場での混乱を避けるため,日本糖尿病学会は,当面の対応策をrecommendation1)として発表していますが,測定キットの評価と改良が待たれます。この陰性化例は,主として従来のRIA法でのGAD抗体価が16U/mL以下の緩徐進行1型糖尿病例に高頻度にみられることから,Tokyo studyその他の結果2)3)を考慮して,以下の対応が必要と考えられます。

    ①ELISA法でのGAD抗体の陽性例は,従来のRIA法では高抗体価の場合が多く,β細胞の機能低下の進行が速いことが予知できます。この進行を予防するため,早期に少量のインスリン投与開始とSU薬,グリニド薬の投与中止を考慮する必要があります。この際,空腹時C-ペプチド(CPR)値が参考となり,CPR≧1.0ng/mLではインスリンによるβ細胞の機能の低下への予防効果が期待できます。一方,空腹時CPR<1.0ng/mLの例では,インスリンによる介入効果が弱いことが予想されます。内因性のインスリン分泌能(CPR値)は,GAD抗体価とは独立したβ細胞機能の保護因子であることがわかっています2)

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