【質問者】
植木浩二郎 国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター長
グルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)抗体は緩徐進行1型糖尿病の診断に重要なマーカーです。最近GAD抗体の測定がradioimmunoassay(RIA)法からenzyme-linked immuno sorbent assay(ELISA)法に変更され,従来陽性であったものが陰性と判定される例(陰性化例)があることが判明しました。臨床現場での混乱を避けるため,日本糖尿病学会は,当面の対応策をrecommendation1)として発表していますが,測定キットの評価と改良が待たれます。この陰性化例は,主として従来のRIA法でのGAD抗体価が16U/mL以下の緩徐進行1型糖尿病例に高頻度にみられることから,Tokyo studyその他の結果2)3)を考慮して,以下の対応が必要と考えられます。
①ELISA法でのGAD抗体の陽性例は,従来のRIA法では高抗体価の場合が多く,β細胞の機能低下の進行が速いことが予知できます。この進行を予防するため,早期に少量のインスリン投与開始とSU薬,グリニド薬の投与中止を考慮する必要があります。この際,空腹時C-ペプチド(CPR)値が参考となり,CPR≧1.0ng/mLではインスリンによるβ細胞の機能の低下への予防効果が期待できます。一方,空腹時CPR<1.0ng/mLの例では,インスリンによる介入効果が弱いことが予想されます。内因性のインスリン分泌能(CPR値)は,GAD抗体価とは独立したβ細胞機能の保護因子であることがわかっています2)。
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