株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

自己心機能回復を可能とする補助人工心臓治療 【補助人工心臓の知られざる能力】

No.4845 (2017年03月04日発行) P.59

小野 稔 (東京大学心臓外科教授)

登録日: 2017-03-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

補助人工心臓(VAD)の目的は,心臓移植への橋渡しと永久植込み治療が最も多い。しかし,補助により心臓への負荷を軽減し,全身のdeconditioningを改善することで心機能が回復してくることがある。自己心機能が回復してVADから離脱させる治療をbridge to recovery(BTR)と呼ぶ。

2002年11月~16年12月に,東京大学心臓外科で244例(植込み型126例,体外設置型118例)のVAD治療を行った。このうち,30例(12%)でBTRが可能であった。デバイス別では体外設置型24例(20%),植込み型6例(5%)で,離脱までのVAD補助期間は10~534日(平均194日)で,拡張型心筋症(DCM)が21例と最も多かった。劇症型心筋炎では,心筋炎の鎮静化とともに心機能が比較的早期に回復してくる症例が少なくない。

筆者らは,自己心機能回復に向けて高用量β遮断薬を軸に,ACE阻害薬またはARBとスピロノラクトンを投与している。どの患者が離脱できるかは治療開始時に予測することは難しく,VAD装着患者全員に対して同じプロトコールによる薬物療法を実施している。心肺運動負荷試験による定量的運動耐容能評価を定期的に行い,運動負荷量を増加させてdeconditioningからの回復を促進している。BNP 100pg/mL未満,心エコーにおけるLVDd 55mm以下,LVEF 45%以上を離脱考慮の基準とする。離脱の可否は単純なVAD停止の状態における心エコーによる心機能評価から,Swan-Ganzモニタリング下に運動負荷や水負荷を行って評価している(オフテスト)。

30例の離脱後観察期間は4年で,離脱後1年および5年生存率は96%,87%と良好である。

【解説】

小野 稔 東京大学心臓外科教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top