関節リウマチ(RA)の治療は,メトトレキサート(MTX)などの合成抗リウマチ薬と,TNFなどを標的とした生物学的製剤によるバイオ抗リウマチ薬の併用により,大変革がもたらされた。達成すべき目標は寛解となり,寛解維持により長期にわたる構造異常や機能障害の進行の防止と,生命予後の改善が可能となった。しかし,生物学的製剤は点滴か注射での使用に限定される。baricitinibは,初めて有効性で生物学的製剤に比べて優越性を示した内服薬である。低分子量ならば細胞内に入り,特定のシグナル伝達分子の活性化部位を阻害することも可能となる。本薬剤はヤヌスキナーゼ(JAK)-1/2に対する分子標的薬である。
baricitinib1日1回4mgの内服で,MTXに治療抵抗性のRA患者において,関節痛,腫脹,倦怠感などの主観的症状,医師の所見や検査を加えた複合的客観的指標を,プラセボのみならずTNFを標的とした生物学的製剤に比べても有意に改善した1)。発現効果は速やかで,1年目まで維持された。関節破壊の抑制効果も生物学的製剤と同等であった。安全性に関しても投与1年目までは忍容性が報告されたが,感染症はプラセボよりも多い傾向にあった。作用機序からは安全性に関する懸念は生物学的製剤よりも少ないとは言えず,経口薬であるがゆえの安易な使用は避けるべきである。全身管理ができる専門医が使用すべきで,わが国における長期安全性に関するエビデンスの蓄積が求められる(日本では適応申請中)。
【文献】
1) Taylor PC, et al:N Engl J Med. 2017;376(7): 652-62.
【解説】
田中良哉 産業医科大学第1内科教授