急性期川崎病患者に対する初期治療として,免疫グロブリン超大量療法(IVIG)とアスピリンの併用が標準的な治療法として確立している
IVIG不応予測例(重症川崎病患者)に対しては,初期治療強化療法(ステロイド併用)を選択できる
初期治療不応例に対する追加治療は十分なエビデンスがいまだ存在しないため,症例ごとにrisk/benefitを十分考慮して治療法を選択すべきである
日本小児循環器学会では,2003年に「川崎病急性期治療のガイドライン」(以下,旧ガイドライン)1)を公表し,免疫グロブリン超大量療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)を中心とした急性期治療を推奨し推進してきた。旧ガイドライン公表後,急性期治療に関連した複数の臨床研究が公表され,エビデンスが蓄積されてきた。そこで,日本小児循環器学会では旧ガイドラインを大幅に改訂し,2012年12月に「川崎病急性期治療のガイドライン平成24年改訂版」2)(以下,新ガイドライン)を公表した。本稿では,新ガイドラインで取り入れられたrisk scoreをもとにした層別化,または,IVIG不応予測例へのupgradeした治療薬の選択,初期治療不応例に対する薬物治療戦略について解説する。
川崎病の急性期治療に関する基本的な考え方は旧ガイドラインと同様,“急性期の強い炎症反応を可能な限り早期に終息させる”ことである。血管炎を鎮静化させるための川崎病急性期治療薬には複数の選択肢がある。新ガイドラインでは各種治療法を研究デザインによるクラス,有効性に応じたグレードに分類し,治療法を選択する上でのエビデンスを明示した。急性期薬物治療はその治療タイミングに対応し,①診断直後に行われる初期治療,②初期治療が有効でなかった症例に対する追加治療,に分類され,急性期治療アルゴリズム(図1)2)が提唱された。
また,血管炎に対する抗炎症治療のみではなく,各種合併症に対する支持的治療も念頭に置くべきである。浮腫,低アルブミン血症,低ナトリウム血症,貧血,肝機能障害,胆囊炎,麻痺性イレウス,下痢,嘔吐,意識障害,痙攣などの全身諸臓器の合併症に対する一般療法も非常に重要である。急性期には,治療を必要とする心機能低下や心不全をきたす患者も少なからず存在する。特に,IVIGをはじめとする静注薬の大量投与には体液量が過剰にならないように心がけ,心不全の発症ないし増悪に十分注意しなければならない。
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