がんの「第4の治療法」の候補として,免疫療法は期待され研究がなされてきた。わが国で積極的に取り組まれてきた腫瘍特異的抗原を標的としたがんワクチン療法は,残念ながら婦人科がん領域を含めまだ承認されたものがなく,開発に苦戦している。一方,近年の抗CTLA-4抗体,抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬は,その劇的かつ長期的な抗腫瘍効果により注目を集め,がん免疫療法全体の開発を活気づかせている。
Hamanishiらは,プラチナ製剤抵抗性の再発・進行卵巣癌患者を対象に,抗PD-1抗体(ニボルマブ)を投与する医師主導治験を行い,その有効性を確認し,世界に先駆けて報告している1)。
免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は,ホジキンリンパ腫を除けば最大でも30%(メラノーマの場合)であり,他がん種では10~20%程度と推定されている。これらの薬剤は高額であり,自己免疫の有害事象も生じうる。今後の課題として,有効症例の選別・有効症例での至適投与期間などを判断できるバイオマーカーの探索,さらには免疫チェックポイント阻害薬では効果が得られない患者に対する治療法の開発,が挙げられる。
婦人科領域においても,がん免疫療法同士や化学療法・分子標的薬などとの併用療法の検討が繰り広げられている。また,遺伝子変異の多いがん種・組織型では,腫瘍特異的変異抗原に由来する個別化ペプチドワクチン療法や個別化T細胞移入療法に期待がなされ,研究されている。
【文献】
1) Hamanishi J, et al:J Clin Oncol. 2015;33(34): 4015-22.
【解説】
鈴木史朗 名古屋大学産婦人科講師