【質問者】
久保田俊郎 東京共済病院病院長/東京医科歯科大学名誉教授
子宮内膜症は,子宮内膜に類似した組織が子宮外で増殖・浸潤する奇異な疾患です。月経痛などの疼痛症状と不妊に関係し,若年から生殖年齢女性のQOL低下をまねきます。およそ9割の女性で観察される骨盤内への月経血逆流現象が本症発生のキーファクターと考えられており,月経回数の増加と本症発生率の上昇の関係が指摘されています。近年の少子・晩婚晩産化の時代にあって,現代女性の生涯における月経回数は,多産であった50年前に比べて4倍程度に増加していると算出されています。このようなライフスタイルの変化が,子宮内膜症の発生率の増加と関連していると推測できます。
一方で,月経の存在が本症発生に不可欠であることや病変の増殖進展にエストロゲンが促進的に働くことから,閉経後には大多数の症例で病変は退縮して症状も改善すると考えられています。わが国における子宮内膜症患者の受療率に関する日本産科婦人科学会の調査でも,50歳を過ぎると本症による受診患者数は激減するとされています。
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