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追い詰められた母子に公的支援を[お茶の水だより]

No.4856 (2017年05月20日発行) P.17

登録日: 2017-05-19

最終更新日: 2017-05-18

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▶熊本市の慈恵病院が匿名で子どもを預かる「こうのとりのゆりかご」の運用を始めてから今月10日で10年を迎えた。昨年3月までに125人の命が預けられたという。運用開始当時、産婦人科医でもある蓮田太二理事長は本誌に「ゆりかご」設置の理由について、新生児の遺棄・殺害事件が増加していることに触れ「1人でも2人でも多くの命を救えたら、という思い」と明かしてくれた。
▶熊本市の専門部会によれば、「ゆりかご」に預けられた子どもの年齢は、生後1カ未満が82.2%で、うち7日未満が47.5%を占める。医療を必要とする子どもは14.9%で、増加傾向だ。預けた理由は、「生活困窮」が21.8%で最も多く、「未婚」(17.8%)、「世間体・戸籍に入れたくない」(17.8%)、「不倫」(12.9%)、「パートナーの問題」(11.9%)、「養育拒否」(5.9%)、「親等の反対」(4.0%)などと続く。子どもの約2割が身元不明だ。
▶昨年改正された児童福祉法では、児童虐待を予防するため、市町村に「子育て世代包括支援センター」を設置することになった。ここでは保健師等の専門職がすべての妊産婦等の状況を継続的に把握し、必要に応じて医療機関など関係機関と協力して支援プランを策定することとなっており、2020年度までの全国展開を目指す。
▶厚生労働省によると、2014年度に虐待によって死亡した子ども71人のうち、心中を除くと、被害に合った子どもの年齢は0歳が6割で、特に月齢0カ月が5割以上を占める。1人でも2人でも多くの子どもたちの命を救うため、「ゆりかご」のような民間の支援のみならず、予期せぬ妊娠をして追い詰められた女性とその子どもに対する全国的な公的支援体制の整備・普及が急がれる。

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