がん患者の実態調査(2013年)によれば、依願退職または解雇されたがん患者の割合は3割を超え、「職場に迷惑をかけたくない」などの理由で治療開始までに退職する患者も少なくない。30万人以上とも言われる「がん就労者」が治療と仕事を両立するには、企業と就労者の間を取り持つ産業医の役割も重要となるが、具体的にどのように支援すればよいのか。埼玉県川口市でプライマリケア、在宅医療に取り組む傍ら、嘱託産業医としてがん就労者支援も行う開業医の杉浦敏之氏に話を伺った。
カシオ計算機のほか、流通会社、ビル管理会社の一部門、地元(川口市)の製造業の4社の産業医をしています。産業医業務のメインはカシオで、首都圏営業部、情報機器部門の子会社、直営店の運営などを担当している子会社の3つを受け持っています。カシオで診ているのは1800人程度です。
産業医としての出務は毎週金曜日と決めています。月1回は職場巡視しないといけないので、1日に2、3の職場を掛け持ちして、都内を“産業医行脚”しています。
診療と産業医の「両立」というよりは「スイッチの切替え」なんですよ。産業医は予防医学が中心で、相手の大半は健康な人。一方、外来はコモンな病気の診断・治療をしながら重篤疾患がないか注意する。在宅は人生の終焉を迎える方を診る。少し語弊があるかもしれませんが、3つのステージに身を置くことで気晴らしになる部分もあると、私は感じますね。
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