薬剤性消化管傷害は,疼痛管理に処方されるNSAIDsによる胃粘膜傷害が1980年代より広く知られていた。その後,抗血小板薬として処方される低用量アスピリン(LDA)による粘膜傷害が1990年代半ばより注目され,本邦では1999年に保険適用となってから粘膜傷害の報告が急増した。2007年にカプセル内視鏡が保険適用となり,NSAIDs,LDAによる小腸傷害が多数報告されている。2009年の「消化性潰瘍診療ガイドライン」からは,LDA潰瘍の予防・治療についても記載されるようになった。さらに2013年には「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」が発表され,ワルファリン,DOACなどの抗凝固薬による消化管出血も増加している。本特集ではこれらの詳細につき,それぞれの分野の第一人者に解説して頂いた。
1 NSAIDsによる消化管傷害
岩手医科大学関連医学分野教授 千葉俊美
2 抗血栓薬による上部消化管粘膜傷害
帝京大学内科教授 山本貴嗣
3 NSAIDs,抗血栓薬による小腸粘膜傷害
日本医科大学千葉北総病院消化器内科病院教授 藤森俊二