非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与による胃潰瘍の発生率は10~15%,十二指腸潰瘍は2~5%程度である
NSAIDs潰瘍のリスク因子として,消化管出血を伴った潰瘍既往歴,高齢者,潰瘍の既往,糖質コルチコイドの併用,高用量NSAIDsや2種類以上のNSAIDs服用者,抗凝固・抗血小板作用のある薬剤の服用,重篤な全身疾患を有する者,ビスホスホネート製剤の併用が挙げられる
NSAIDsとHelicobacter pylori(H. pylori)は相加的に上部消化管出血のリスクを高める
NSAIDs起因性上部消化管傷害は,出血・狭窄などの合併症を有する頻度が高く,半数近くで自覚症状を欠く
NSAIDs潰瘍の治療は,NSAIDsを中止し抗潰瘍薬の投与が推奨され,NSAIDs中止が不可能であれば,プロトンポンプ阻害薬(PPI)あるいはプロスタグランジン(PG)製剤の投与が推奨されている
NSAIDs潰瘍発生はCOX-2選択的阻害薬により減少する
出血性潰瘍既往歴のある患者の再発予防には,COX-2選択的阻害薬にPPIを併用することが推奨されている
NSAIDsは一般に心血管イベントを増加させるが,そのリスクは薬の種類によって異なる
NSAIDsによる小腸粘膜傷害では,多発する比較的浅い楕円形・不整形・打ち抜き潰瘍を認め,輪状潰瘍や膜様狭窄などが認められる
NSAIDsによる大腸粘膜傷害は回盲部および右側結腸に好発し,潰瘍型と腸炎型が認められている
非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)の投与期間である1週間~6カ月間において内視鏡検査によって認められた胃潰瘍の発生率は14.2%,十二指腸潰瘍の発生率は5.4%であり1),わが国でも3カ月以上のNSAIDs服用者に対する内視鏡検査では,胃潰瘍を10~15%,十二指腸潰瘍を2%に認めると報告されている2)。また,NSAIDs潰瘍の発生時期は,NSAIDs内服開始から3カ月以内で消化管出血のリスクが高い。
一方で,cyclooxygenase(COX)-2選択的阻害薬と従来型NSAIDsの6カ月~1年間投与による比較試験では,消化管出血の頻度は従来型NSAIDsで0.42~1.7%,COX-2選択的阻害薬では0.26~0.76%と低下傾向を示している。
NSAIDs服用により,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは高まり,NSAIDsとHelicobacter pylori(H. pylori)感染は相加的に上部消化管出血のリスクを高めるとされている3)4)。さらに,NSAIDs潰瘍のリスク因子として,消化管出血を伴った潰瘍既往歴,高齢者,潰瘍の既往,糖質コルチコイドの併用,高用量NSAIDsや2種類以上のNSAIDs服用者,抗凝固・抗血小板作用のある薬剤の服用,重篤な全身疾患を有する者,ビスホスホネートの併用が挙げられている。
H. pyloriに関連した胃潰瘍は胃角部から胃体部に発生し,NSAIDsや低用量アスピリンに関連する胃潰瘍は,不整形で浅い潰瘍が幽門部を中心に多発する傾向がある5)(図1)。一方,H. pylori陽性のNSAIDs服用者に発生する胃潰瘍は幽門部と胃角部に発生し,H. pylori潰瘍とNSAIDs潰瘍の両者の特徴を併せ持つとされる。
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