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(2)男性がん患者に対する妊孕性温存の現状 [特集:若年性がん患者における妊孕性対策]

No.4748 (2015年04月25日発行) P.26

木村文則 (滋賀医科大学医学部産科学婦人科学講座女性診療科講師)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • 担癌患者自身の精子産生能は既に低下していることが多い点に留意する

    化学療法はその種類と用量により造精機能への影響が決まり,放射線療法は精巣の被曝量が比較的低くても影響を与える

    日常臨床で一般に行われているがん治療前の妊孕性温存方法は,射出精子の凍結保存である。精子が確認できない場合には,膀胱内の精子の確認などを行い,onco-TESEなども考慮する

    化学療法後に無精子症となった場合にも,40%程度の患者においてTESEにより精子が確認される

    1. がん生存者の増加と妊孕性温存の必要性

    男性の生涯において約2人に1人ががんと診断され,そのおよそ4%が35歳以下であることが知られている1)。がん治療における基本的な目標は根治であり,そのため手術療法による摘出,化学療法や放射線療法を組み合わせた治療が行われる。これらの集学的な医療の効果と安全性の向上は,若年のがん生存者(cancer survivor)の増加をもたらした。それにより,15歳以下のがん治療を受けた患者の75%以上が,5年生存を望めるようになった2)。また,15~44歳の患者においても66%の生存率が期待できるようになっており3),実に青年の700人に1人以上ががん生存者となっている4)
    一方で妊娠する力(妊孕性)は,がん自身の病態やがん治療のために低下する可能性がある5)。すなわち,がんおよびがん治療により不妊になるのである。この不妊は一時的な状態のこともあるが,50~95%のがん患者は永続的な不妊となってしまうことが知られている6)7)。がん治療が功を奏し生存できても,妊孕性の喪失はがん生存者にとって大きな苦しみとなる。
    このようなことから,近年,妊孕性温存の重要性が注目されるようになった。晩婚化,再婚する男性の増加など社会的情勢も大きく関わり,今後もその必要性は増大していく一方であると考える。
    本稿で,男性がん患者に対する妊孕性温存について論じるにあたり,がんおよびその治療が生殖細胞に及ぼす影響,具体的な妊孕性温存の方法について述べ,今後の展開にも少し触れることとする。

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