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産科領域におけるERAS®【帝王切開後に早期離床し,血栓予防を図るべき】

No.4860 (2017年06月17日発行) P.54

小野寺洋平 (秋田赤十字病院産科副部長)

寺田幸弘 (秋田大学産婦人科教授)

登録日: 2017-06-14

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ERAS®(enhanced recovery after surgery)とは,術後回復力強化や合併症軽減,入院期間短縮などをめざす管理指針である1)。ERAS®は消化器外科領域で普及し,今日では産婦人科を含む他科にもその考え方が広がりつつある。

ERAS®による周術期管理は,①最小限の絶飲食,②早期離床,③術後鎮痛強化,である。①では,術前2時間までの清澄水摂取と,6時間前までの固形物摂取を許可し,インスリン感受性の低下を防ぎ創癒合促進や感染予防を図る。②については,蠕動運動促進,創治癒促進,呼吸機能改善を目的として術後当日2時間までの離床が推奨されている。③の術後鎮痛は患者満足度の向上のみならず,②の早期離床にも欠かせない。そこで,硬膜外麻酔を含めた複数の鎮痛法の併用が勧められている。

帝王切開後は静脈血栓塞栓症のハイリスク因子であり,術後1日までの離床が推奨されている2)。硬膜外麻酔の局所麻酔薬濃度を下げオピオイドを添加することで,鎮痛を保ちつつ運動麻痺を予防し,離床を促すことも有用である3)

従来の術後管理を見直し,それぞれの施設に応じた管理方法を検討することで,より安全で快適な入院生活につながる可能性がある。

【文献】

1) Fearon KC, et al:Clin Nutr. 2005;24(3):466-77.

2) 妊産婦死亡症例検討評価委員会, 他:母体安全への提言2014(1). [http://www.jaog.or.jp/medical/ikai/project03/PDF/botai_2014.pdf]

3) 小野寺洋平, 他:分娩と麻. 2017. [in press]

【解説】

小野寺洋平*1,寺田幸弘*2  *1秋田赤十字病院産科副部長 *2秋田大学産婦人科教授

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