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加齢と運転に関する研究の推進を[お茶の水だより]

No.4863 (2017年07月08日発行) P.16

登録日: 2017-07-06

最終更新日: 2017-07-06

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▶高齢者の交通事故を防止するために必要な方策について議論した警察庁有識者会議は先月、運転能力に応じた限定条件付免許の検討を求める提言をまとめた。警察庁によると、米国(一部の州)、ニュージーランド、アイルランド、スイス、ドイツは限定免許制度を導入。その多くが医師の診断に基づき、当局が時間や場所など限定している。
▶2016年の日本の交通死亡事故は3410件。このうち75歳以上の運転者によるものは459件で、13.5%を占める。全年齢層の死亡事故が減少傾向にあるのに対し、75歳以上の死亡事故は横ばいだ。超高齢社会に突入する日本において、高齢運転者の事故防止対策は喫緊の課題といえる。
▼3月12日に施行された改正道路交通法では、認知症高齢者の認知機能低下を早期に把握するために、75歳以上に対する認知機能検査と医師の診断機会を増やした。高齢者を継続的に診療する機会が多いかかりつけ医の認知症診療における役割はますます大きくなっている。
▶小誌では、No.4861で改正道路交通法と認知症診断に関する特集を組み、認知症の豊富な臨床経験を有する藤井直樹氏に診断書作成のノウハウを解説していただいた。この中で藤井氏は、「運転能力に関する要因は多岐にわたるため、運転免許の適否は運転適性を最もよく評価できる路上での実車テストで本来行われるべき」と指摘した。
▶限定免許の導入を検討する際には、その判断基準や事故防止効果の検証が必須となる。高齢者の運転能力に応じて安全対策を進めるためには、実車テストの導入に加えて、認知症と運転技能の関係、運転適性を評価する指標など、加齢と運転に関する研究の一層の推進が必要だ。

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