【質問者】
松岡 隆 昭和大学医学部産婦人科学講座准教授
我々産科医にとって,FGRは重要な疾患群のひとつです。染色体や構造に異常がない胎盤機能不全が主因と考えられる児の生育限界には,明確な数字があるわけではありません。そのため,妊娠22週以降,26週未満の時期における娩出のタイミングは,新生児科医との相談が重要となります。
当院において,羊水過少は認めないものの重度の臍帯過捻転,臍帯動脈・静脈管逆流を認めていた一例では,生育限界の観点から帝王切開術の選択ができないままに胎児死亡となりました。妊娠23週0日で322gの児を死産されました。最も小さい救命例は,妊娠22週(推定体重199g)から人工羊水注入療法を行い,妊娠26週342gで出生となった児で,現在も大きな後遺症もなく生存しています。また妊娠高血圧症例では,羊水注入を行ったものの母体血圧の上昇の適応により,それ以上の妊娠期間の延長はできず,妊娠25週1日で398gの児を出産し,大きな後遺症もなく経過しています。
娩出のポイントは,①胎児循環の正確な評価をいかに行うか,②既存の管理方法ばかりではなく子宮内環境の改善を図れているかどうかの2点です。
残り494文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する