わが国の高血圧対策では,国民全体での減塩を通したポピュレーションアプローチが重要である
健康日本21(第二次)では,減塩による収縮期血圧平均値2mmHg低下が目標に含まれている
減塩戦略においては,マスメディアによる普及啓発のほか,食品製造業者による加工食品の減塩,給食・外食産業における調理の減塩が重要である
わが国でも加工食品からの食塩摂取量が多く,外食・中食(なかしょく)も増加傾向であり,今後,ポピュレーションアプローチの強化が必要である
生活習慣病をはじめとする各種疾病の予防対策として,ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチの2つがある。この考えは英国・ロンドン大学のRose1)2)が提唱したものである。特に循環器疾患においては危険因子がほぼ明らかとなっており,これによってハイリスク者の同定が可能になり,2つのアプローチを組み合わせた対策が行われてきた。すなわち,血圧値,血清脂質値,血糖値,肥満度などを用いた対策である。
集団においてこれらの危険因子は一般にほぼ正規分布する。数値が不良なハイリスク者を早期に発見して介入する手法がハイリスクアプローチであり,健診によるスクリーニングとその後の保健指導や薬物治療がこれにあたる。一方,集団の危険因子の分布を全体として良好な方向にシフトさせる対策がポピュレーションアプローチであり,集団全体への普及啓発や環境整備がこれにあたる(図1)。
ポピュレーションアプローチは,集団全体が病んでいるときの根本的解決法(個人への対策は表層的)であり,患者数減少の効果も大きく,環境を変えることで個人の努力が少なくて済むなどの利点があるが,個人への利益は見えにくいなどの欠点もある。
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