慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,患者数あるいは死亡順位の上昇から早期診断・介入の必要性が明らかで,健康日本21(第二次)で対象疾患のひとつに組み入れられた。健康日本21(第二次)におけるCOPDに関する目標は「2022年度までにCOPDの認知率を80%に」ということであるが1),認知率も診断率もあまり向上していない。
COPD患者の比較的一般的な症状は労作時息切れであるが,加齢のためと思って見過ごしたり,息切れによって無意識に日常の労作(運動量)を減らしているために,実際は存在する労作時息切れを実感せず,医師にも訴えないことが多いことが,認知率・診断率の伸び悩みの原因と考えられる。
COPDは高血圧症や脂質異常症のように「患者側から治療を要求される」ことはきわめて少なく,「医療側が積極的に診断すべき疾患」と言えよう。COPDは喫煙習慣や活動の低下から糖尿病や心血管病変,骨粗鬆症などの併存症を持つ場合が多く2),慢性疾患で通院中の患者に潜む未診断のCOPDは約25%に及ぶ3)。一般臨床の現場で,呼吸機能検査をルーチンに行うこと以外に,COPDの過少診断からの脱却の道はない。
【文献】
1) 厚生労働省:厚生労働省告示第四百三十号. 2012.
[http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf]
2) Barnes PJ, et al:Eur Respir J. 2009;33(5): 1165-85.
3) Takahashi T, et al:Respirology. 2003;8(4): 504-8.
【解説】
一ノ瀬正和 東北大学呼吸器内科教授