84歳の女性。既往歴,家族歴に特記すべきことはない。脂質代謝異常,糖尿病,高血圧もなく,喫煙歴もない。6月1日,誤嚥性肺炎を発症し他院に入院加療中であった。肺炎は軽快していたが,6月7日に突然左前胸部痛を自覚し持続するため,心電図検査を施行。心電図をとると,胸部誘導でST上昇(特にV4~V6でのST上昇が著明)していたがⅡ,Ⅲ,aVFでのST低下は認めなかった(図1)。胸痛が持続しST上昇したままであり,5時間後に血液検査を施行(表1)。心筋逸脱酵素は上昇していないが,STの上昇とトロポニン陽性,BNP上昇のため心筋梗塞を疑って救急搬送された。
本例は心電図とトロポニン陽性から心筋梗塞を疑った。しかし他の心筋逸脱酵素の上昇を認めないので,本当に心筋梗塞であろうか。肺炎は軽快し白血球数もCRPも改善していたが再上昇しており,ST上昇を伴う胸痛を自覚している。
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