現在保険収載されている腫瘍マーカーは約40種類あるが,その主な機能は「がんの診断とモニタリング」である
各種腫瘍マーカーの臓器特異性や偽陽性を示す病態を理解し測定を行う
多くの腫瘍マーカーはスクリーニングでの有効性は低いが,有病率の高い集団において有用である
腫瘍マーカー(tumor marker)はバイオマーカーのひとつである。バイオマーカーは「正常な生物学的過程,発病の過程,もしくは治療介入による薬理学的反応を反映する,測定および評価可能な特性」と定義されている1)。
腫瘍マーカーの定義はいくつか存在するが,大倉は「がん細胞がつくる物質またはその物質に反応して担がん生体がつくる物質で,がんの存在と種類,量などを示す目印となるもの」と定義している2)。現在,わが国で使用されている腫瘍マーカーについては,2016年に発刊された『分子腫瘍マーカー診療ガイドライン』(日本分子腫瘍マーカー研究会編)に詳しく記述されている。
体液中(主として血液中)で測定可能なものが,いわゆる「腫瘍マーカー」として臨床検査の場で使われている。腫瘍マーカーはホルモン産生腫瘍に対するヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin:hCG)などのホルモンから,α-フェトプロテイン(α-fetoprotein:AFP),がん胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)などの胎児性蛋白,CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)などの糖鎖抗原など,現在に至るまで様々なタイプが開発されてきた。現在,保険適用されている腫瘍マーカーは約40種類ある(表1)3)。
腫瘍マーカーの役割は,①スクリーニング,②がんの補助診断,③病期分類,④予後予測,⑤治療効果の判定予測,⑥治療効果のモニタリング,⑦再発のモニタリング,などが挙げられるが(表2),保険適用上の解釈としては,「がんの診断とモニタリング」が主たる機能である。保険適用されている主要な腫瘍マーカーを中心に,腫瘍マーカーの機能を解説する。
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