リウマトイド因子(RF)は,関節リウマチ(RA)に感度が高い一方で特異度が低いという欠点があった。抗CCP抗体(ACPA)はRFと同程度の感度がありながら,特異度が高い抗体である
関節症状を有する場合は両抗体とも早期診断に有用であるが,無症候性ではRF陽性の意義は乏しい。一方で,RF・ACPA両陽性は無症候性であっても近い将来のRA発症を強く示唆する所見である
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は骨破壊性滑膜炎を病態の中心とする自己免疫疾患であり,その免疫学的異常の表出としてリウマトイド因子(rheumatoid factor:RF)や抗CCP抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody:ACPA)などの自己抗体を伴う。本稿では,日常臨床におけるこれらの抗体の取り扱いおよび解釈について概説する。
RFとは免疫グロブリン(immunogloblin:Ig)のFc領域に対する自己抗体を指す。一般に,RFという名称はIgM型のRFを指すが,他のIgと同様にIgG型,IgA型,IgE型も存在している。RFが産生されるメカニズムは明確にはなっていないが,EB(Epstein-Barr)ウイルスやパルボウイルスなどによる感染症の影響や喫煙などの環境因子のほか,IgGにガラクトース欠損などの構造変化が起きることで抗原性が高くなり,RF産生が亢進するといった機序が考えられている。
“リウマチ因子”という名称の通り,RA患者におけるRF陽性率は70~85%と高く,長年診断における最も重要な血液検査とされてきた。しかし一方で,RFの特異度は40~90%と低く,陽性が必ずしもRAの診断と直結するわけではない。RF陽性となる疾患は,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)やシェーグレン症候群をはじめとする膠原病疾患,感染性心内膜炎やウイルス感染などの感染症,悪性腫瘍など様々である(表1)1)。また,わが国でのRFのカットオフ値は健常人における陽性率が5%となるように標準化されているため,健常人であっても陽性となりうる。RF陽性率は加齢に伴いさらに上昇し,高齢者では一般人口においても陽性率が10%を超えるという報告がある。
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