【Q】
結核感染診断にinterferon-gamma release assays(IGRA)が用いられるようになってきたが,クォンティフェロンⓇTBゴールド(QFT)とT-スポットⓇ. TB(T-スポット)の2法の優劣を伺いたい。最近,QFTの採血管のトラブルが多発しているが,T-スポットに変えるべきか。(東京都 O)
【A】
T-スポット検査は,QFT検査より採血現場における検体取り扱いが容易であり,また診断性能はより優れているため(表1),今後さらに広く使用されるようになるであろう
IGRAであるQFTと,T–スポットそれぞれのメリット・デメリットを解説する。
QFTのメリットとして,QFTの検体は,自動で検査することが可能であるため大量の検体処理に適している。また培養終了後,検査まで検体の保存ができることもメリットの1つである。
QFTにおける重大なデメリットは,採血時の検体の取り扱いが容易でない点であろう。特に,以下の3点については十分注意する必要がある。
③回収血漿の再遠心の必要性
検査における注意点として,以下の点がある。血液培養後QFT採血管を遠心し,分離剤上に分離された血漿をELISA(enzyme linked immuno sorbent assay)に用いるが,正確な検査結果を得るためには回収した血漿を再度遠心する必要があることが明らかになってきた2)。
QFTの添付文書には,「血漿検体をサンプルチューブに移し替えるときは,分離剤及び沈殿物を吸い上げないように注意する」と記載されてはいるが,もともとの血漿回収量が少量であるため沈殿物を吸い上げる可能性が高いと考えられることから,やはり正確な結果を得るためには回収血漿の再遠心は必要であると思われる。
T–スポットのメリットとしては次のようなものがある。T–スポットに用いる検体はヘパリン採血した全血であり,通常10歳以上の被検者から6mL程度採血すれば十分である。採血時には,採血量を正確に採取することも,採血管を注意深く振る必要もないため,採血現場においてはQFTよりも格段に容易である。
また,T–スポットでは,リンパ球を精製して培養に用いるため,血中に存在するIFN–γ阻害物質や,血中の既存IFN–γも洗浄され,より正確な検査結果が得られる。
さらに,QFTにおいて妨害因子とされる一定以上の溶血や乳びなどがあっても,これらも洗浄されるため検査は影響を受けない。検査には一定の細胞数を用いるため,常に安定した結果が得られ,特に免疫抑制状況においてもQFTより感度は保たれている。
T–スポットにおけるデメリットは,検査が自動化できておらず,また採血からスポット発現まで連続した工程であるため,大量の検体を処理するためには多くの人員と機械・設備などが必要になるということである。
○
両検査に共通する検体取り扱い上の注意点としては,採血から培養までの検体保管温度を適切に保つことである。
QFTのデメリットは主に採血現場におけるものであり,T–スポットのデメリットは主に検査現場におけるものであるため,検査を依頼する医療機関では当然のことながらT–スポットが好まれるであろう。さらに,T–スポットにもQFTと同様に判定保留と判定不可という結果があるが,筆者らの経験ではその出現率はQFTよりも低く,このこともT–スポットが今後さらに優位に立つ要因になると考えられる。
1) Gaur RL, et al:J Clin Microbiol. 2013;51(11): 3521-6.
2) 関谷幸江, 他:結核. 2011;86(3):405.
3) クォンティフェロンⓇTBゴールド添付文書
[http://www.bcg.gr.jp/qftgold/pdf/QFT_TB-GOLD.pdf]
4) T–スポットⓇ.TB添付文書
[http://www.tspot-tb.jp/product/download/pdf/PI-TB8-JP-V3_130904.pdf]
日本ビーシージー製造株式会社
[http://www.bcg.gr.jp/qftgold/move.html]