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食道癌に対する救済手術を前提とした化学放射線療法の可能性と展望 【食道温存の可能性を求めつつ,根治的化学放射線療法の晩期心肺毒性の軽減も図ったJCOG 0909試験の結果に期待】

No.4877 (2017年10月14日発行) P.60

髙井良尋 (脳神経疾患研究所附属 南東北BNCT研究センター センター長)

松下晴雄 (東北大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学 講座准教授)

登録日: 2017-10-17

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  • 東北大学での臨床試験や日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)0909でも行われていますが,救済手術を前提とした化学放射線療法についての可能性と展望に関しての質問です。現在の標準治療である術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)+手術と全生存期間(overall survival:OS)が同じであれば,いくらかでも食道温存の可能性のあるこちらの治療に移行すると思われますが,その可能性についてご教示下さい。東北大学・松下晴雄先生にお願いします。

    【質問者】

    髙井良尋 脳神経疾患研究所附属 南東北BNCT研究センター センター長


    【回答】

    ご質問にあるJCOG0909試験は,Ⅱ-Ⅲ期胸部食道癌を対象として,救済手術を念頭においた根治的化学放射線療法(definitive chemoradiotherapy:dCRT)多施設臨床試験で,症例登録を終了し経過観察期間中です。

    過去のわが国の多施設試験では,Ⅱ-Ⅲ期dCRTの治療成績を確認するJCOG9906試験や,NAC対術後化学療法のランダム化比較試験であるJCOG 9907試験などがあります。

    JCOG9906試験(73例)では,予防域を含めた60Gy/30分割(2週間の予定休止有)の照射と5FU+シスプラチン(FP療法)同時併用(奏効例に2コース追加)においては,完全奏効率62%,5年生存率37%でした。これに対しJCOG9907試験の「NAC群」(163例)は,5年生存率55%,5年無増悪生存率44%でした。これら2試験を統合解析したJCOG 1406A1)試験で,「NAC群」の成績が「dCRT群」より良好と判断され,手術可能なⅡ~Ⅲ期は,NAC+食道切除術が標準治療とされています。これによりdCRTは,手術不能例や拒否例などに施行するとの判断が多くなされているものと思われます。

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