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(3)GLP-1受容体作動薬とQOL,患者満足度,アドヒアランス[特集:糖尿病治療におけるGLP-1受容体作動薬の位置づけ]

No.4877 (2017年10月14日発行) P.41

石井 均 (奈良県立医科大学糖尿病学講座教授)

登録日: 2017-10-13

最終更新日: 2017-10-11

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  • QOLや治療満足度は,治療実行度(アドヒアランス)を決める重要な要因である

    GLP-1受容体作動薬(注射療法)においてもQOLや治療満足度は低下しない

    GLP-1受容体作動薬のQOLや治療満足度の改善は,体重減少やHbA1cの改善と相関する

    注射療法が困難な症例(例:高齢者)にとっても便利な製剤が登場している

    注射療法においては,丁寧なinformed choiceが必要であり,患者中心ケアの理念を診療の場に生かすことが大切である

    1. 打たなければ効かない─治療実行度(アドヒアランス)が問題である

    「飲まない薬は効かない,打たない注射薬は効かない」。薬がその本来の効果をもたらすためには,患者がその治療法を日々の生活の中で実行していく必要がある。医師との間で合意に至った(薬物)治療をどの程度実施しているかを表現する用語がアドヒアランスである。

    アドヒアランスはいくつかの要因の影響を受ける。
    その概略を説明するが,アドヒアランスは,以下の3要因の影響を受ける (図1)1)

    ①外的要因(環境要因):医師の関わり方,家族の援助,治療の複雑性,投与法,レジメ,社会経済状態。
    ②内的要因(心理的要因):健康信念,実行への自信,感情,うつ病,認知機能。
    ③結果要因(強化要因):医学的結果(HbA1c,血糖値,体重,症状など)と患者評価結果(QOL,治療満足度)。

    この中で,疾患およびその治療と,それがもたらす結果およびアドヒアランスの関係を図2に示す。糖尿病および合併症は,医学的(症状,生化学的変化,生理学的変化,寿命)にも患者の感じる生活の質(QOL)にも(悪)影響をもたらす。これを軽減あるいは除去するために治療を行う。治療は,疾患による悪影響を軽減,除去するが,それ自身が新たな(悪)影響(例:副作用)や生活への障害を与える可能性がある。

    医師は,医学的結果(medical outcome)が望ましいものであれば,その治療を継続する可能性が高い。しかし,患者は,医学的結果だけではなくQOL(生活に与える影響,心の状態,身体機能,あるいは費用)や治療満足度(便利かどうか,副作用はどうか,継続したいか,など)を通して治療を継続するか〔どの程度きちんと服薬するか(アドヒアランス)〕どうかを決める。

    “Numerous studies conclude that treatment and its mode of administration may create a burden for patients, thus affecting patient acceptance, adherence and compliance towards treatment. In turn, this impacts patient satisfaction regarding health, treatment and health-related quality of life(HRQL). As a result, satisfaction and HRQL have been identified as two key factors for treatment success in diabetes.”2)

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