【質問者】
北島博之 大阪急性期総合医療センター小児科顧問
お産を考える上でいつも基本にあるものは「お産とは何か」です。まず,お産なしに我々人類は存在しません。また「人間らしいお産」が行われないと,どうなるでしょうか?
赤ちゃんの誕生は,ただ生理的な現象として孤立的に考えることはできません。それは妊婦と家族の人生の1つの通過点であり,大切な出来事であり,大事な営みなのです。周産期に受けたあらゆる温かいサポートは,家族や子に影響することが示唆されています。逆に言えば,ロビン・カー=モースらの『育児室からの亡霊』に示されているように,「人間らしい心温まるお産」が行われないと,社会そのものが壊れかねません。
「人間らしい心温まるお産」に何より必要なものは環境であり,安全や安心が確保されていることも重要です。第二次世界大戦後,多くの国々において出産場所は自宅から病院に変わりました。1970年の英国における,母子の安全を高めるために病院出産を推進する報告書にはそれらの動きが記されています。しかしその後の70年間は,病院出産のマイナス面,さらに自宅出産の再検討を示唆する研究,報告も数多く出てきています。
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