内科の先生方には、いつもお世話になっております。精緻な術前診断、周術期の各種コンサルトなど、先生方のお力添えなしで手術はできません。悲しいですが、研修医時代に培った知識は頭頂部の毛と同様に年々抜け落ち、心電図の読影すら怪しく、ついこの間まで研修医だった内科医に「そんなことも知らないの?」という目でみられる屈辱にも慣れてしまいました。勘とノリを重視し、勉学という地道な努力を怠りがちな我々から、先生方に知識としてお伝えするものは本来皆無なのですが、「急性腹症の診断」についてであれば有意義なお話ができるかと考え、筆を執りました。
「外科腹」などと俗称される、いわゆる「手術が必要な急性腹症」には、様々な疾患があります。大雑把に言えば、「腫れモノ」「破れモノ」「腐りモノ」の3種類に分類されます。「腫れモノ」は炎症性疾患で、急性虫垂炎(アッペ)、急性胆嚢炎などが代表選手です。「破れモノ」は十二指腸穿孔、小腸穿孔、大腸穿孔などの穿孔シリーズ。「腐りモノ」は絞扼性イレウス、上腸間膜動脈血栓症、非閉塞性腸管虚血などがよく知られています。
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