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呼吸器感染症診断の進歩【分子生物学的手法の進歩による包括的迅速診断法の開発】

No.4901 (2018年03月31日発行) P.50

山田充啓 (東北大学呼吸器内科院内講師)

登録日: 2018-03-28

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現在でも中心となっている呼吸器感染症の原因菌を同定する方法は,喀痰などの患者検体の培養による同定である。培養法による原因菌の同定率は低く,広域抗菌薬が汎用される一因となっている。そのため,培養困難な微生物も含め,遺伝子を増幅し検出する分子生物学的手法が応用されてきている。既に現在,PCR法やLAMP法による特定病原体の検出が臨床応用されている。さらに,単一病原体の同定のほかに,臨床検体から包括的に病原体を検出する方法が開発されつつある1)

multiplex PCR法は,複数の病原微生物特異的なプライマー・ペアを使用して,同時に増幅することにより,複数の病原微生物を同定する方法である。近年は検体からの核酸抽出から増幅反応,検出までをすべて自動で行うシステムが開発されており,既に欧米では一部の製品が病原微生物の同定のほか,薬剤耐性菌の検出目的に承認され使用されている。最近multiplex PCR法による包括的な細菌・ウイルス検出法が市中肺炎の診断・治療に有効か,についての検討が英国より報告されている2)。従来の培養法では39%の患者でしか病原微生物が検出されなかったのに対し,multiplex PCR法では87%の患者まで病原体を検出することができたと報告されている。さらに,検査結果により抗菌薬の適正使用が導かれたと報告されている。

今後の課題として,目的微生物の定量化やパネル内容の充実化などがあるが,有用な情報を提供できる検査法と期待されている。

【文献】

1) Torres A, et al:Eur Respir J. 2016;48(6):1764-78.

2) Gadsby NJ, et al:Clin Infect Dis. 2016;62(7): 817-23.

【解説】

山田充啓 東北大学呼吸器内科院内講師

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