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ベーチェット病の難治性病態の最近の動向─神経ベーチェット病を中心に[内科懇話会]

No.4903 (2018年04月14日発行) P.46

司会: 安倍 達 (埼玉医科大学総合医療センター名誉所長)

演者: 廣畑俊成 (北里大学膠原病・感染症内科学主任教授)

登録日: 2018-04-12

最終更新日: 2018-04-10

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  • 【司会】 安倍 達(埼玉医科大学総合医療センター名誉所長)
    【演者】 廣畑俊成(北里大学膠原病・感染症内科学主任教授)

    神経ベーチェット病は大きく「急性型」と「慢性進行型」にわけられる

    急性型は,頭部MRI所見(T2強調像)の高信号,髄液細胞数の増多が特徴である

    慢性進行型は,髄液IL-6の持続的上昇と脳幹の萎縮が特徴で,喫煙,HLA-B51陽性例が9割を占める

    ステロイドは急性型には有効であるが,慢性進行型には無効である

    IL-6が下がりきらない難治性の慢性進行型症例に対しては0,2,6週のインフリキシマブ投与が有効である

    ベーチェット病の疫学

    ベーチェット病と言えば,内科では「血管ベーチェット病」「腸管ベーチェット病」「神経ベーチェット病」が3本柱ですが,今回は特に「神経ベーチェット病」についてお話します。

    ベーチェット病はイスラエルやイラン,イラクなどの中近東から中国,韓国,日本にかけてシルクロード沿いの国や地域に非常に多い病気であることから,別名「シルクロード病」という名前もつけられています。通常の膠原病と異なり,男女比は1:1で,20~30歳代に好発します。

    発症には,遺伝的素因と環境因子が関与すると言われています。ベーチェット病の3/4が遺伝的素因としてHLAのクラスⅠ抗原と有意に関係していることは,ほぼ確実だと思います。主な遺伝的素因であるHLA-B51では有意な相関(約60%)がみられます。また昨今,HLA-A26が特に難治性の眼病変と関係があると言われており,患者の約15%を占めています。そのほかHLAほど強い相関ではありませんが,IL-23R,IL-12RB2あるいはIL-10遺伝子がベーチェット病の発症と有意に関係していることもわかっています。

    環境要因としては,たとえば虫歯・扁桃炎の既往が挙げられます。様々な細菌抗原を対象に,ベーチェット病患者のリンパ球に対する刺激性を調べたところ,健常人は反応しないような微量でも細菌抗原が存在するとリンパ球が反応し,炎症性サイトカインがつくられることがわかりました。具体的に言うと,Tリンパ球の過敏反応性がベースにあり,それから産生されるサイトカイン,たとえばインターフェロンγやIL-17が好中球の異常を惹起して,炎症を引き起こすものと考えられます。

    微生物の特異性はありません。ベーチェット病患者のリンパ球は,健常人では反応しないような少量の微生物に対しても反応すると考えられ,虫歯を抜いたときや,扁桃炎のときに発作が誘発されるのはそのためであると推測できます。同様に,感染,手術,外傷をきっかけに増悪がみられるのも,非特異的な刺激に対して健常人よりもかなり過敏に反応することの現れであり,これはこの疾患の特徴と言えるのではないかと考えます。

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