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大腸SSA/Pの臨床病理学的特徴

No.4929 (2018年10月13日発行) P.52

村上 敬 (順天堂大学消化器内科)

永原章仁 (順天堂大学消化器内科教授)

登録日: 2018-10-10

最終更新日: 2018-10-09

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【右側結腸に好発するSSA/Pは,高悪性度のがんへと進行するポテンシャルを秘めた病変である】

かつて過形成性ポリープ(HP)は,非腫瘍であり治療対象にならないと考えられていたが,TorlakovicらはHPの中にがんを併発する亜型が存在することを報告し,現在この病変は,WHO分類ではsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)としてHPとは別に分類されている。SSA/PはBRAF遺伝子変異,MLH1遺伝子のメチル化などの分子生物学的特徴を有し,高度のmicrosatellite instabilityを示す大腸癌へと進行するserrated pathwayの前駆病変と考えられている。

これまでSSA/Pの診断基準は明確でなかったが,2011年の大腸癌研究会プロジェクト研究において,①陰窩の拡張,②陰窩の不規則分岐,③陰窩底部の水平方向への変形,の3つのうち2つ以上を認めるもの,と定義された。

SSA/Pの内視鏡像はHPと類似し褪色調の平坦隆起性病変であるが,HPが左側結腸・直腸に好発し5mm以下の病変が多い一方で,SSA/Pは右側結腸に好発し5mm以上の病変が多い。特にSSA/Pでは表面の豊富な粘液付着が特徴で,拡大内視鏡による特徴的な開Ⅱ型pit patternを認めれば,SSA/Pの診断はおおむね可能である。さらに通常の形態とは違い,(亜)有茎性,2段隆起,陥凹,発赤の所見をSSA/Pに認めた場合には,dysplasiaやがん併存の可能性が示唆される。SSA/Pは一度がん化すると急速に進展し,通常の腺腫由来のがんと比較してリンパ管侵襲やリンパ節転移が高率で,粘液癌を併存することも多く,臨床病理学的に重要な病変である。

SSA/Pの発育進展についてはまだ不明なことも多く,今後さらなる解析を要する。

【解説】

村上 敬,永原章仁 順天堂大学消化器内科 *教授

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