プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用頻度は確実に増加している。特にわが国の高齢者においてPPI服用者の増加は顕著である
PPIによる胃粘膜変化は特徴的なものが多く,典型像を意識して内視鏡診断に臨むことが必要である
PPIによる胃粘膜変化の典型像は,水腫様の胃底腺ポリープ(FGP),多発性白色扁平隆起,敷石状粘膜,黒点などである
組織学的には,壁細胞の変性所見(PCP)が特徴的である
わが国では,高齢化に伴う疾患構造の変化により,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)を使用する機会が増えてきた。PPIは,消化性潰瘍の治療のみならず,逆流性食道炎,非ステロイド系消炎鎮痛薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)やアスピリン服用による潰瘍再発予防,ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:H. pylori)除菌治療など幅広い適応を有している。循環器疾患,整形外科疾患などの増加を背景に,PPIの使用量は著しく増加している。わが国では,1991年にオメプラゾールが承認されたのを皮切りに,その後ランソプラゾール,ラベプラゾール,エソメプラゾールが相次いで承認された。さらには,2015年には,カリウムチャネル拮抗型薬剤であるボノプラザンが使用可能となり,その使用範囲はさらに拡大してきた。
実際のPPI使用割合に関して,我々が以前実施した検診受診者での検討では,50歳代で7%,60歳代で11%,70歳代では21%がPPI使用者であり,年齢とともに増加傾向がみられた。さらに病院受診者での検討では,PPI服用者の割合はより高率であり,70歳代で45%,80歳以上では50%に及んだ1)。
PPI使用者には,特有の胃粘膜変化がみられることが既に知られている。その詳細は,「胃炎の京都分類」にも詳記されているが2),本特集では,それぞれについて内視鏡画像を提示しつつ解説したい。