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婦人科手術と癒着防止剤

No.4946 (2019年02月09日発行) P.50

河野康志 (大分大学産科婦人科診療教授)

楢原久司 (大分大学産科婦人科教授)

登録日: 2019-02-10

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【製剤ごとに長所・短所はあるが,明らかな効果の違いや有害事象の増加はなし】

婦人科の手術術式には従来からの開腹手術に加えて,近年普及や発展が著しい腹腔鏡手術がある。疾患の根治を目的とし,さらに広範囲にわたっての病巣摘出を行う手術や妊孕性の回復もしくは低下を防ぐことを目的とする手術等があり,施術後に周辺の骨盤内臓器の癒着を予防するために癒着防止剤を使用する機会が増えてきた。異なるタイプの製剤が発売されており,剤形はフィルム状,布状,スプレータイプなど様々である。

それぞれの製剤には長所・短所があり,布状のものは腹腔鏡下手術では腹腔内への搬入は容易であり,貼付する際の操作性も優れている。フィルム状のものはどちらかと言えば開腹手術では操作性において効果を発揮するが,腹腔鏡下手術での使用も様々な工夫を凝らした方法が報告されている。最近になって発売されたスプレータイプのものは,開腹手術はもちろんのこと,腹腔鏡下手術においても術野への搬入に苦慮することがなく噴霧可能である。ただし,準備はやや煩雑である。

これまでに,各癒着防止剤の有用性についてのエビデンスが示されており1),どの製剤についても明らかな効果の違いや,それぞれの製剤が原因とされる有害事象の増加等は報告されていない。いずれにしても,癒着防止剤は手術の目的,術野への搬入方法,操作性,準備の時間,医療コストおよび癒着防止効果などを総合的に判断して使用することが重要であろう。

【文献】

1) Hindocha A, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD011254.

【解説】

河野康志*1,楢原久司*2  大分大学産科婦人科 *1診療教授 *2教授

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