月経とは「約1カ月の間隔で起こり,限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されている。正常の月経周期は25~38日,その変動が6日以内である。月経周期が24日以内の月経を頻発月経,月経周期が39日以上の月経を希発月経という。無月経は生理的無月経(妊娠・産褥・授乳・閉経)と病的無月経に分類する。妊娠の可能性を常に考慮し,妊娠の可能性を否定できない場合は,妊娠反応を行う。日本の平均閉経年齢は50歳前後であり,40歳未満での閉経は早発閉経として病的無月経に分類する。
病的無月経は,原発性無月経(満18歳になっても初経を認めない)と続発性無月経(既存の月経が3カ月以上停止)に分類される(表)。問診によって両者を鑑別し,原発性無月経では先天疾患の有無につき身体所見と画像検査,ホルモン検査にて精査をする。続発性無月経の場合は,身体所見,ホルモン検査を確認後,治療法選択のための負荷試験を施行する。
治療は,挙児希望がない場合にはホルモン療法,挙児希望がある場合には排卵誘発をする。器質的疾患による無月経の場合には手術療法が適応となる。また,基礎疾患による無月経の場合には原疾患の治療をする。
月経発来は,視床下部-下垂体-卵巣-子宮内膜の連鎖により制御されている。視床下部視索前野の神経細胞からパルス状に分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)は,下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone:FSH)と黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH)を分泌させる。主にFSHにより卵巣での卵胞発育とエストロゲン分泌が促進され,子宮内膜は増殖期となる。LHサージ開始の約36~40時間後,ピークの10~12時間後に排卵が起こり,黄体から分泌されるプロゲステロンにより子宮内膜は分泌期となる。妊娠が成立しない場合は黄体の寿命は約2週間のため退縮し,白体となる。それに伴うエストロゲン,プロゲステロンの低下により月経が発来する。生理的無月経と病的無月経,原発性無月経と続発性無月経の鑑別,そして無月経の原因の精査をすることによって,上記連鎖のどの部分に異常があるのかを診断する。
問診:妊娠の有無,初経の有無,家族歴,発達発育歴,妊娠分娩歴,分娩時大量出血の既往,子宮内容除去術・子宮頸部円錐切除術の既往,体重,運動・精神的ストレスの有無,服用薬剤,乳汁分泌の有無,放射線治療・抗癌剤治療の有無,卵巣手術の有無,鼠径ヘルニア手術の有無。
身体所見:低身長,肥満,翼状頸,外反肘の有無,嗅覚異常,視力障害,乳房発育・恥毛など二次性徴の有無,男性化徴候の有無,腟奇形の有無。
画像検査:経腟・経腹超音波検査,MRI,CT。
ホルモン検査:ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG),FSH,LH,エストラジオール,テストステロン,プロラクチン,甲状腺刺激ホルモン。
負荷試験:ゲスターゲン検査(プロゲスチン投与)にて消退出血をきたせば第1度無月経(WHO group 2),さらにエストロゲン・プロゲスチン投与にても消退出血がなければ子宮性無月経,消退出血をきたせば第2度無月経(WHO group 1 or 3)。そのうち,GnRH投与にて消退出血をきたせば下垂体性ではなく視床下部性無月経。
原発性無月経では対象年齢が若いことが多いため,内診に対する羞恥心に十分配慮し,MRIに診断を託すことも必要である。病名の告知や説明については慎重に行う。親とともに,わかりやすい丁寧な説明を心がける。原発性無月経の30~40%に染色体異常を認める。染色体異常を疑う場合は,遺伝カウンセリングの体制が整っている施設で十分なカウンセリングを行った上,染色体検査を行うのが望ましい。
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