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(1)上部消化管内視鏡の前処置・薬剤投与の基本と工夫,検査に伴う偶発症への対応[特集:内視鏡検査の前処置と薬剤投与]

No.4971 (2019年08月03日発行) P.20

樋口和寿 (日本医科大学消化器内科学)

貝瀬 満 (日本医科大学消化器内科学教授/内視鏡センター長)

登録日: 2019-08-05

最終更新日: 2019-07-31

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スムーズな内視鏡検査のためには前処置が重要であり,適切な前処置なくして,精度の高い内視鏡検査は行えない

内視鏡検査前の咽頭や鼻腔の局所麻酔には,麻酔効果が十分に得られるようにリドカインを使用するが,過度な量の使用はリドカイン中毒を起こすため,注意が必要である

鎮静薬の使用時には,適応の有無を検討し,患者の背景を考慮した上で,鎮静薬の選択や使用量を決定し,検査時や検査後の偶発症の早期発見に努める

内視鏡検査の偶発症は一定の確率で起こるため,偶発症を早期に発見し,迅速に対応できる体制の構築が重要である

1. 経口上部消化管内視鏡検査における前処置・薬剤投与

経口上部消化管内視鏡検査は経鼻内視鏡検査と比較して,患者がより強い苦痛を伴う検査である。そのため,患者の感じる苦痛を減らすことによって,安全に,かつ円滑に検査を進めることができ,結果として精度の高い内視鏡観察へとつながる。まずは前処置に入る前に,内服歴,既往歴,薬剤アレルギー歴などの確認が必要である。前処置・薬剤投与は,粘液除去薬内服→咽頭局所麻酔→鎮静薬・鎮痛薬/鎮痙薬投与の順で進められる。その手順に沿って要点を解説する。

1 粘液除去薬内服

通常の上部内視鏡検査は病変の拾い上げと質的診断が主な検査目的であるため,正確な観察を行うことが重要である。そのためには,胃粘膜に付着した唾液や粘液,内服して付着した薬剤を除去する必要がある。特にHelicobacter pylori感染があると胃内の粘液は多くなる。

現在,わが国で広く行われている前処置は蛋白分解酵素であるプロナーゼを用いた粘液の溶解除去法である1)。プロナーゼはその効果を発揮するための至適pH(7~10)と至適温度(40℃程度)があり,酸性条件下では不安定であるため,炭酸水素ナトリウムを同時に投与することが望まれる。当院では,ジメチコン(バルギン®消泡内用液2%)40mLを蒸留水400mLで稀釈して作成したジメチコン水40mLにプロナーゼ®MS1包(0.5g)と炭酸水素ナトリウム1包(1g)を加えたものを経口上部消化管内視鏡検査の約10分前に服用してもらっている。

また,唾液や粘液を除去することで,胃の観察だけでなく,咽頭や食道の観察も容易になる。プロナーゼ水を作成した後に常温で保存するとプロナーゼ活性が1時間で約5%低下し,約24時間で半減してしまうため,室温での長時間の放置は避ける。

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