(神奈川県 N)
【まずはメトロニダゾールからチニダゾールへ薬剤を変更する】
治療後に検査が陽性になった場合・治療失敗例の多くは,内服薬を指示通り服用していないか,パートナーからの再感染が考えられますが,この患者では考えにくく,難治性トリコモナス症であると思います。
効果の期待できる治療指針や対応の方法1)2)としては,以下の通りです。
①メトロニダゾールからチニダゾール(チニダゾール®錠500mg「F」通常成人2000mgを1回経口投与)への変更を試みる3)。
治癒できなければ,
②海外の初回治療であるメトロニダゾール(フラジール®内服錠250mg)4錠分2,7日間内服にて再治療する。
治療できなければ,培養検査と感受性検査を行う。
③メトロニダゾール(フラジール®内服錠250 mg)8錠,単回投与を24時間おきに3~5日間,試みる。
また,腸管アメーバの適応のパロモマイシン(アメパロモ®カプセル250mg)1500mg分3,10日間,食後に経口投与,ドキシサイクリン(ビブラマイシン®錠)400mg分2,7日間投与での治癒報告例がありますが,このような治療は性感染症治療に十分な経験のある医師のもとなされることが勧められています。
メトロニダゾールの再投与を行う場合に,注射薬の使用は可能かとの質問を受けますが,内服薬の腸管からの吸収率は90%以上なので,注射薬に切り替えるメリットはありません。
他の患者への感染予防対策としては,浴槽,便器,下着,浴用タオルなどに付着した帯下(たいげ)も感染源となるので注意して取り扱う必要があります。
トリコモナス症罹患患者の特徴として,淋菌感染症および他の性感染症(sexually transmitted disease:STD)との同時感染がよくみられます。
米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の「2015年性感染症治療ガイドライン」4)では,CDCが難治性トリコモナス症の治療を支援するための電話相談窓口とwebサイト5)を設けていることを紹介しています。
【文献】
1) 岩破一博:臨と研. 2016;93(9):1213-5.
2) 日本性感染症学会:日性感染症会誌. 2016;27(1): 76-8. [http://jssti.umin.jp/pdf/guideline- 2016.pdf#page=76]
3) Workowski KA, et al:MMWR Recomm Rep. 2015; 64(RR-03):1-137.
4) Centers for Disease Control and Prevention: 015 Sexually Transmitted Diseases Treatment Guidelines.
[https://www.cdc.gov/std/tg2015/trichomoni-asis.htm]
5) Centers for Disease Control and Prevention: Infectious Diseases Laboratories.
[https://www.cdc.gov/laboratory/specimen-sub mission/detail.html?CDCTestCode=CDC-10239]
【回答者】
岩破一博 京都府立医科大学医学部看護学科医学講座 産婦人科学教授