【酸棗仁湯や加味帰脾湯の併用により,徐々に睡眠薬の減量・中止の可能性】
「傷寒論」や「金匱要略」に始まる漢方医学では,従来,睡眠障害の中でも,不眠などの障害などについての記載はあるが,そのほかの睡眠中の障害に関しての記載は,筆者の知る限りほとんどないと思われる。漢方治療における方剤の選択は東洋医学的病態を基にした方法(随証療法)で行われるのが望ましいが,誌面の関係上,それには触れない。
最近睡眠薬の慢性投与が問題となっているが,酸棗仁湯や加味帰脾湯の併用により,徐々に睡眠薬の減量・中止の可能性を報告している。
ナルコレプシーに葛根湯,補中益気湯,釣藤散,特発性過眠症に四逆散,酸棗仁湯,むずむず脚症候群(RLS)に抑肝散,RLSや周期性四肢障害で冷えを伴う場合に牛車腎気丸や八味丸,ほてりを伴う場合に六味丸や三黄瀉心湯,レム睡眠行動障害(RBD)やRBDと睡眠時無呼吸症候群(SAS)の合併に抑肝散,SASに補中益気湯,睡眠時驚愕症(夜驚)に抑肝散加陳皮半夏の有効性の報告がある2)。補中益気湯には,特別な原因がない昼食後の眠気に有効性の報告もある3)。
【文献】
1) Miyaoka T, et al:Altern Integr Med. 2015;4(1): 181-6.
2) 山寺博史:診断と治療. 2015;103(10):1328-31.
3) 花輪壽彦:漢方診療のレッスン. 増補版. 金原出版, 2003.
【解説】
山寺博史 やまでらクリニック院長
加藤憲忠*1,田中耕一郎*2 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 *1客員講師 *2准教授