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肛門部の不定愁訴および神経因性症状に対する疎経活血湯の効果

No.5009 (2020年04月25日発行) P.57

小原邦彦  (おばら消化器肛門クリニック院長 )

奈良和彦 (東邦大学医療センター大森病院)

田中耕一郎  (東邦大学医療センター大森病院)

登録日: 2020-04-28

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 【疎経活血湯は副作用もほとんどなく神経由来の症状に対する有効な方剤のひとつ】

痔核・裂肛・痔瘻などの病変を認めないにもかかわらず肛門部痛や違和感を訴える症例をたびたび経験する。これらは神経因性骨盤臓器症候群に代表される神経因性の病態として理解される1)。痔疾用坐剤やNSAIDsが無効のことが多く手術適応もないため,患者は医療機関を転々とするケースも少なくない。プレガバリンやデュロキセチン,クロナゼパムなどが有用な例もあるが嘔気,眠気などの副作用も知られている。

疎経活血湯は古来,坐骨神経痛をはじめとする筋肉・神経由来の痛みに用いられてきた。これら肛門部の疼痛,違和感等に対しても疎経活血湯が有効な例をたびたび経験する。2014年3月から18年7月までに肛門部の疼痛,違和感のため当院を受診し,器質的疾患が否定され疎経活血湯を投薬した30例(男性17例・女性13例,平均年齢53歳)に関してその効果を検討した2)。結果は著効11例,有効11例,無効8例で著効・有効を合わせた有効率は73.3%(22/30例)だった。既往に腰部の整形外科的疾患を有した11例は全例有効だった。

疎経活血湯は副作用もほとんどなく肛門とその周囲に生じる神経由来の痛み,しびれ,違和感等の症状に対して有効な方剤のひとつと考えられる。

【文献】

1) 高野正博:大腸肛門機能障害の診断と治療. 弘文堂, 2011.

2) 小原邦彦:第75回日本東洋医学会関東甲信越支部学術集会. 肛門部の神経因性症状に対する疎経活血湯の使用経験. 2018.

【解説】

小原邦彦 おばら消化器肛門クリニック院長

奈良和彦,田中耕一郎 東邦大学医療センター大森病院

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