早期大腸癌には,粘膜内癌(Tis/M)と粘膜下層浸潤癌(T1/SM)がある。M癌は転移しないが,SM癌は約10%にリンパ節転移を認める。肉眼型には,表面型と隆起(ポリープ)型の2種類がある1)。
SM高度浸潤癌はリンパ節転移の頻度が高く,また,内視鏡切除で不完全切除になりやすいため,通常,内視鏡治療の適応にならない。
術前診断では,SM軽度浸潤癌までの病変とSM高度浸潤癌の鑑別が重要になる。
内視鏡診断のポイントは,病変を遠景,中間景,近景像にわけ,いろいろな角度(正面像,側面像)から様々な空気量で観察することである。具体的な観察項目は,肉眼型,大きさ,色調,表面性状(陥凹局面,びらん,凹凸,顆粒・結節),ひだ集中・ひきつれ像,辺縁硬化像などである。
空気量が多めの遠景像は,病変の全体像の把握や硬化像・ひきつれによる浸潤所見の拾い上げに有用である。
空気量の少ない像も,腫瘍の空気変形やSM層のvolume effectによる深達度診断に有用である。
画像強調観察(image-enhanced endoscopy:IEE)として,narrow band imaging(NBI)やblue laser imaging(BLI)による拡大観察は深達度診断に有用である。
NICE分類はNBI所見の基本分類であり,NICE分類Type 3はSM高度浸潤癌の指標である。NICE分類は,非拡大/拡大観察両方で使用可能な分類である。
JNET分類は,NBI拡大所見分類で,NICE分類のType 2を細分類した形になっている。JNET分類Type 3はSM高度浸潤癌の指標であるが,Type 2Bと診断した病変や診断に自信がない場合は,色素を用いたpit pattern診断を行う。
NICE分類,JNET分類はNBI所見の分類であるが,BLIでも同様に使用可能である。
超音波内視鏡検査は貫壁性の構造が評価でき,SM癌の場合,具体的な浸潤の程度や筋層との関係など詳細な情報が得られる。注腸造影検査も深達度診断に有用である。1つの診断ツールに固執せず,状況に応じて各検査を使いわけたり組み合わせることが,正確な深達度診断を行う上で有用である。
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