【質問者】
永尾重昭 公立昭和病院予防・健診センターセンター長
【H. pylori感染診断法は,各々の特徴を理解して選択する】
わが国で胃がんリスク層別化検査が広く普及した結果,臨床現場でも血清抗H. pylori抗体価のアセスメントを求められる機会が多くなっています。除菌治療後を除けば,抗体価陽性の場合はH. pylori現感染と判断して問題ありませんが,血清抗体価が陰性であった場合の解釈に注意が必要です。キットによって異なりますが,胃粘膜の萎縮進展に伴う抗体価の陰転化現象のため,偽陰性が10%以上に認められ,他検査による感染状態の検証がしばしば必要になります。
追加検査としては,侵襲性がなく,感度・特異度も同等とされる呼気テストか便中抗原検査を用いるのが通常です。筆者自身は前者を用いていますが,各医療機関の検査のしやすさや受診者の受容性に基づく選択で問題ありません。なお,UBTは口腔内常在菌などの影響でウレアーゼ活性が弱陽性になる場合があることは知っておく必要があります。また,内視鏡検査(「胃炎の京都分類」)・胃X線検査による胃粘膜診断の感度・特異度はいずれも90%以上とされ,画像情報がある場合は活用が有効です。H. pylori感染診断は1つの検査のみでは限界があり,2つ以上の検査を組み合わせることを常に考慮することが望ましいでしょう。
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