上皮性腫瘍として乳頭腫,非上皮性腫瘍として脂肪腫,毛細血管性血管腫,リンパ管腫,顆粒細胞腫,平滑筋腫,神経鞘腫などが挙げられる。
ほとんどの病変は無症状で,内視鏡検査で発見されることが多い。
食道乳頭腫は血管を有する間質と扁平上皮の乳頭状増殖からなり,基部の小さい数mm以下の白色調の房状,発赤調の桑実状隆起を示す1)。炎症性ポリープや食道癌と鑑別を要する場合には生検を行う。
顆粒細胞腫,毛細血管性血管腫2),リンパ管腫,脂肪腫,平滑筋腫,神経鞘腫は,粘膜下腫瘍(SMT)様の形態を示す。腫瘍によって主座や硬さ,表面を覆う上皮の厚さなどの特徴が異なるので,辺縁部の立ち上がりの形状,色調,表面構造,血管透見像の状態,大きさを画像強調法や拡大観察,ヨード染色も併用して観察する。また,鉗子で押して腫瘍の変形の様子や可動性を確認する。病変の主座や内部構造を正確に診断するには,超音波内視鏡(EUS)検査が必要である。
顆粒細胞腫,毛細血管性血管腫,リンパ管腫,脂肪腫,粘膜筋板由来の平滑筋腫が挙げられる。顆粒細胞腫の典型例は,立ち上がりがやや不明瞭で表面黄白色の硬い10mm程度の隆起を示し,内視鏡下生検で組織診断が得られる。粘膜筋板由来の平滑筋腫も生検で診断がつけられる。類似した形態を示して鑑別を要する疾患として,低分化型食道癌や類基底細胞癌,リンパ球浸潤を伴うがん,神経内分泌細胞癌などの特殊な組織型を示す悪性腫瘍,壁内転移が挙げられる。
平滑筋腫,神経鞘腫とgastrointestinal stromal tumor(GIST)があるが,食道では平滑筋腫がほとんどを占め,神経鞘腫とGISTの頻度は低い3)4)。内視鏡では表面平滑で色調変化がなく,EUSでは固有筋層由来の境界明瞭で辺縁整,内部均一な低エコーを示すことが多い。形態診断からこれらを鑑別したり,悪性度を評価したりするのは難しく,免疫組織化学染色(免疫染色)を併用した組織生検が必要で,EUSガイド下穿刺吸引生検法(EUS-guided fine needle aspiration biopsy:EUS-FNAB)による組織生検が有効である。組織像は,不明瞭な核の柵状配列を伴った紡錘形細胞が細胞密度高く増殖し,平滑筋腫は平滑筋アクチン,デスミンが陽性,CD34,c-kit,S-100蛋白は陰性となる。神経鞘腫はS-100蛋白が陽性,平滑筋アクチン,デスミン,CD34,c-kitが陰性となることが特徴である。GISTはc-kit,CD34が陽性となる。平滑筋腫では,腫瘍内部に高度な石灰化を伴う場合があり,EUSでは石灰化のため腫瘍の全体像や深部の情報が得られないことから,EUS-FNABを行えないことがある。このようなケースでは形態や大きさで経過観察する。
非上皮性腫瘍と鑑別しなくてはならない疾患には,血管や気管,椎体など壁外からの外圧迫,肺癌やリンパ節,縦隔腫瘍や甲状腺腫瘍など,壁外に主座を持つ腫瘍による圧排や浸潤がある。いずれも,EUSやCTによる検索を行って鑑別,除外診断する。
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