潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)は主として大腸粘膜を侵し,びらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性大腸炎である。好発年齢は若年20歳代と50歳代で,再燃と寛解を繰り返し,社会生活に長期に影響を及ぼす難病である。過去の報告では発症後10年間の手術率は24%と報告されている。近年では難治手術例は減少傾向にあるものの,長期罹患例では発がんリスクが問題となっている。患者数は近年増加傾向にあり,2015年度の調査では患者数は22万人以上と推定されている。
持続性または反復性の粘血・血便を主な症状とする。粘液や粘血便は潰瘍性大腸炎と他の腸管出血や下痢症を鑑別する上で重要である。また,発症後も慢性経過をたどる疾患であり,発症から受診まで数週間以上を要することが多い。中等症~重症では1日4回を超える下痢や顕血便,37.5℃以上の発熱,頻脈,貧血などがみられる。さらに,腸管外症状として大小の関節炎や結節性紅斑,壊疽性膿皮症などの皮膚疾患を合併することがある。
潰瘍性大腸炎の診断や病型・重症度評価に下部消化管内視鏡検査は有用である。活動期の潰瘍性大腸炎では粘膜は直腸から連続性,びまん性に発赤調を呈し,血管透見性は消失し,膿汁や粘液による小黄白色点を伴う細顆粒状粘膜を呈する。中等症となると膿性粘液付着,接触出血を伴う粘膜脆弱性,びらんが出現し,重症例では自然出血や潰瘍,さらに進行すると縦走傾向を呈する深掘れ潰瘍や地図状潰瘍,広範な粘膜脱落などがみられる。
血液検査では,排便回数や血便の頻度が多くとも,白血球数やCRPの上昇を認めないことが多い。便潜血検査,便中のleucine-rich alpha2 glycoprotein(LRG)やカルプロテクチン検査などは非侵襲的検査として疾患活動性の評価や再燃予測に有用である。
感染性腸炎を必ず否定した上で,内視鏡的寛解,粘膜治癒を目標に適切な治療を量・期間ともに過不足なく提供する。内視鏡的寛解を得られない場合は,再燃リスクや慢性炎症を背景とした発がんが懸念されるため,治療強化を検討する。
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