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食道アカラシア[私の治療]

No.5047 (2021年01月16日発行) P.38

岩切勝彦 (日本医科大学大学院医学研究科消化器内科学大学院教授)

登録日: 2021-01-16

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  • 健常者では,下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)は,嚥下とともに弛緩が起こり,また,嚥下後に出現する一次蠕動波がLESに到達した時点で,弛緩が終了する。その後は胃内容物の逆流を防止するため,15~20mmHgの圧でLESは収縮している。そのほか,LESは食道内の拡張刺激(胃液,空気の食道内逆流)によって弛緩が起こるが,食道アカラシア(以下,アカラシア)はこの嚥下,食道内拡張に伴うLESの弛緩不全と一次蠕動波の蠕動障害により,液体,固形物の食道から胃への通過障害をきたす原因不明な一次性食道運動機能障害である。成人に多くみられるが,小児から高齢者の幅広い年齢層に発症し,特に好発年齢はない。性別では男女差はなく,発症頻度は年間人口10万人当たり1例程度の稀な疾患である。

    ▶診断のポイント

    まず症状からアカラシアを疑うことが重要である。症状は,LES弛緩不全に伴うつかえ感,口腔内への食物,液体の逆流(この口腔内逆流は特に就寝中に多く,アカラシア患者ではよだれの流出で枕が汚れることが多い。胃酸を含まないので酸味はない),咳嗽である。これらの症状を有する場合には,常にアカラシアの存在を念頭に置いて診療することが重要である。

    中等症以上の症例では,食道造影検査(食道の拡張,食物残渣・液体貯留,下部食道のスムーズな狭窄),内視鏡検査〔食道内の拡張,食物残渣の貯留,esophageal rosette(深吸気時にも下部食道の柵状血管全体像は観察されないが,襞集中像が観察される)(図)〕の有無により診断されるが,軽症例ではこれらの所見が乏しく,長期間アカラシアの診断がつかず放置されていることも多い。これら軽症例のアカラシアの診断には,食道内圧検査(LES弛緩不全,一次蠕動波の消失)が必須である。

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