食物アレルギーは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義される。成人では即時型症状を呈する臨床型が多いが,一部には食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)や口腔アレルギー症候群といった特殊型もみられる。
疑われる原因食物,時間経過などの詳細な問診が重要となる。その上で,特異的IgE抗体検査や皮膚プリックテストを行う。ともに感度は高いが,特異度は低いことに注意を要する。問診とこれらの検査で原因食物を特定できない場合,食物経口負荷試験を行い,陽性であれば診断が確定する。
FDEIAの場合,原因食物の摂取後2時間以内に誘発されることが多い。運動以外に,感冒,睡眠不足,月経前状態,NSAIDs服用,アルコール摂取,入浴なども発症の誘発因子となりうる。
アナフィラキシーを疑う場合は,皮膚・粘膜症状,消化器症状,呼吸器症状,循環器症状,神経症状の各臓器の重症度(Grade)が定められており,それらを評価することが必要である。Grade2(中等症)が複数臓器でみられる場合,およびGrade3(重症)の症状を含む複数臓器の症状を呈した場合,アナフィラキシーと診断される。気管支喘息の存在はアナフィラキシー重篤化の危険因子とされる。また,二相性反応がみられる場合もあり,注意を要する。
治療は,摂取すると症状が誘発される食物を除去することである。FDEIAの場合,原因食物を摂取後4時間程度は運動を避ける必要があるが,原因食物の完全除去は必要としない。
アナフィラキシーを呈している場合,生命の危険があるため,迅速な対応を要する。バイタルサインの確認を行い,要すればアドレナリンの筋注を行う。アドレナリン筋注の適応はGrade3の症状および気管支拡張薬吸入で改善しない呼吸器症状である。また,過去に重篤なアナフィラキシーの既往がある場合や症状の進行が激烈な場合,循環器症状を認める場合,呼吸器症状ではGrade2でもアドレナリン筋注を考慮する。アドレナリン筋注の適応がない場合,各臓器の治療に移行する。副腎皮質ステロイドは二相性反応を予防する可能性がある。
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