【後期研修前に学会に入会して新専門医制度プログラムに参加し,研修をスタートするのが理想的】
読者のご質問に答える前に,まず医師という職業について解説します。医師は医師免許(医師国家資格)があれば,基本的にどの領域でも働くことができます。ただし,近年,診療においては,より専門的な知識や技術が要求されるようになっています。一昔前は,町のクリニックの看板などで,内科・外科・小児科を標榜して開業している医師を見かけることがありましたが,最近はとても少なくなりました。というのも,一見すべてを診ることができる素晴らしい医師のようにみえますが,一方でうわべだけの診療で的確な診断や治療を行っていただけないのではないか,ということが一般の方々にも知られるようになったからです。
自分が患者の立場になってみるとわかりますが,その病気の専門的知識・技術を持っている医師に診てもらいたいと思うのは当然のことです。そのために必要となってきたのが「専門医」という称号です。現在,日本専門医機構が,各学会が認定する「専門医」が適切なプログラム/カリキュラムおよび試験によって認定されているかをチェックするようになっています。
ご質問された研修医の先生は,「内科」を志望しているということですので,まずは「内科専門医」の取得をめざすことになります。しかし内科は,「循環器内科」「呼吸器内科」などのように細分化され,その1つ1つが「眼科」「皮膚科」などの領域と同じくらい,あるいはそれ以上の学会員数ならびに専門医数をかかえています。そのため,「内科専門医」だけでは,自身の専門性をアピールできません。したがって,「内科専門医」を取得した後に,「循環器専門医」や「呼吸器専門医」などの取得をめざすのが一般的です。この場合,新専門医制度では「内科」を基本領域,「循環器内科」などをサブスペシャルティ領域と呼んでいます。
通常,内科専門医を取得するまでの期間は3年,内科のサブスペシャルティ専門医を取得するまでの期間も3年です。このように,内科のサブスペシャルティ専門医を取得するには,他の領域に比べて研修期間が長くなってしまいます。これでは,内科領域を希望する若い医師が減ってしまうかもしれません。
そのため,内科領域では“連動研修”という制度を設けています。すなわち,内科を研修中に内科サブスペシャルティの研修をオーバーラップして行うことも可能としています。これは施設ごとのプログラム/カリキュラムによって異なりますが,3+3の6年ではなく,3+2の5年,もしくは4年で終了することも可能にしています。その場合,3年後に内科専門医試験,その1~2年後に内科のサブスペシャルティ専門医試験を受けることになります。
質問者は内科志望ということですので,後期研修(医師歴3年目)が始まる前に日本内科学会に入会して新専門医制度プログラムに参加し,研修をスタートすることが理想的です。そして,なるべく早く,内科の中のどのサブスペシャルティを専門とするかを決めることです。そうすれば,ロスなく効率的な研修を受けることができます。
コロナ禍の学会開催ですが,オンサイト+WEB開催の併用(ハイブリッド開催)で運営していることが多いので,自宅にいても将来自分がめざす専門医になるための勉強をすることができます。多くの学会では「教育」のためのセッションを設けていますので,それを聞くだけでも大変自身のスキルアップにつながります。
【参考】
▶ 日本内科学会専門医制度.
[https://www.naika.or.jp/nintei/shinseido 2018-2/]
【回答者】
池田隆徳 東邦大学医学部循環器内科教授