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【OPINION】我が国の国際保健政策人材をいかに養成するか─厚生労働省懇談会ワーキンググループ報告書を読む

No.4817 (2016年08月20日発行) P.20

岡林広哲 (国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部保健医療開発課)

小原ひろみ (国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部保健医療開発課)

宮野真輔 (国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部保健医療開発課)

馬場幸子 (大阪大学大学院医学系研究科医学科国際交流センター特任助教)

仲佐 保 (国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部長)

江副 聡 (厚生労働省大臣官房国際課課長補佐)

中谷比呂樹 (慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所特任教授)

登録日: 2016-08-16

最終更新日: 2017-01-20

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  • 2015年8月、厚生労働省は、我が国における将来的な国際保健の対応強化に向け、国際保健人材の養成及びネットワーク構築をはじめとする同省の国際保健戦略を検討することを目的として、厚生労働大臣の下、「国際保健に関する懇談会(以下、懇談会)」を設置した1)。懇談会では検討事項として、「国際保健の体制」及び「国際保健政策人材の養成」が取り上げられ、それぞれの事項について検討を行う2つのワーキンググループ(以下、WG)が設置された。16年5月、各WGの報告書が取りまとめられたが、本稿では「国際保健政策人材の養成」WG報告書2)について紹介する。

    国際保健政策人材を2020年度までに50%増加させる

    WGは、我が国が国際保健分野で影響力を維持・拡大するとともに、我が国の経験等を世界各国で活かすことなどで国際的な貢献をするため、我が国の国際保健政策人材を2020年度までに50%増加させるという目標を提言した。
    WGでは、まず用語の定義を定めた。「国際的組織」とは、世界保健機関(WHO)をはじめとする国連機関など公的組織のほか、グローバルファンドなどの非営利組織を含むものである。「国際保健政策人材」とは、リーダーポストに就いている幹部職員のほか、WHOが設置する専門委員会などで国際的規範を設定する委員(規範セッター)、国際チームを率いてプロジェクトを遂行する実務リーダーの三者を含んでいる。「国際保健人材」とは、国際保健政策人材に加え、リーダー、規範セッターとなっていない国際保健に関わる人材を含んでいる。
    これまで、国際保健政策人材を増やすことは、国内の公的セクターの人材派遣により国連機関職員を増やすことに重きが置かれがちだった。しかし、非営利組織や民間セクターが台頭し、医療市場拡大に伴い国際的規範・基準設定に戦略的に関わる重要性が増すなど、国際保健を取り巻く環境は著しく変化してきている。
    このため、WGでは公的組織のみならず、非営利組織、国際的規範を設定する委員会を含めた国際的組織で活躍する国際保健政策人材養成について検討がなされた。
    現在、国際的組織の国際保健政策人材ポストは2339あると推定されるが、それらのポストのうち邦人は52名しかおらず、その割合は2.2%に過ぎない2)。また、保健関連の5つの国連機関(WHO、国際連合児童基金〔ユニセフ〕、国連人口基金〔UNFPA〕、国連開発計画〔UNDP〕、国連合同エイズ計画〔UNAIDS〕)において、リーダーポスト以外を含めた専門職員は8627名いるが、邦人専門職員は219名しかおらず、その割合は2.5%で、主要先進7カ国の中で最少となっている。過去4年間の増加率(増加数)で見ても、他の6カ国は6~15%(26~69名)増加しているのに対し、日本は1%(3名)しか増えていない2)3)
    なお、韓国、中国は専門職員数自体は日本より少ないものの、その増加率(増加数)においては韓国が70%(23名)、中国が31%(18名)と日本をはるかに上回っている(表)。

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