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早期胃癌(内視鏡的切除)[私の治療]

No.5102 (2022年02月05日発行) P.43

藤城光弘 (東京大学大学院医学系研究科器官病態内科学講座消化器内科学分野教授)

登録日: 2022-02-07

最終更新日: 2022-02-01

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  • 早期胃癌は胃粘膜に発生する上皮性悪性腫瘍のうち,リンパ節転移の有無を問わず,腫瘍の浸潤が粘膜内または粘膜下層までにとどまるものである。内視鏡的切除適応の原則は,リンパ節転移の可能性がきわめて低く,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあることである1)。内視鏡的切除には,内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)がある。リンパ節転移の危険が95%信頼区間の上限で1%未満と推定されており,外科的胃切除と同等の長期予後の成績が得られているものが「絶対適応病変」,長期予後のエビデンスに乏しいものが「適応拡大病変」と定義されている。

    具体的には,絶対適応病変は,EMR/ESD適応病変とESD適応病変にわかれ,前者は2cm以下の肉眼的粘膜内癌(cT1a),分化型癌,潰瘍所見なし(UL0)とされるもの,後者は,① 2cmを超えるcT1a,分化型癌,UL0,②3cm以下のcT1a,分化型癌,潰瘍所見あり(UL1),③2cm以下のcT1a,未分化型癌,UL0,である。

    適応拡大病変は,内視鏡的切除施行後にcT1a,分化型癌で局所再発したものである。
    これら以外の早期胃癌で年齢や併存症など何らかの理由で外科的切除を選択しがたいため,推定されうるリンパ節転移率などを考慮しつつ内視鏡的切除が選択されるものが「相対適応病変」と定義されている。

    ▶診断のポイント

    通常白色光観察によって壁深達度,潰瘍所見の有無を,生検病理診断によって組織型の診断を行う。narrow band imaging (NBI)などの光デジタル法による拡大内視鏡観察が腫瘍の側方進展診断に有用であり,通常白色光観察やインジゴカルミン色素内視鏡観察に加えて,腫瘍サイズや切除範囲の正確な同定のために使用する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    全例入院の上,内視鏡的切除を行う。事前に外来で一般血液検査,心電図,呼吸機能,胸腹部CT検査等で,転移や他疾患の有無,耐術能をチェックする。

    抗血栓薬服用者の場合は,処方医に確認の上,休薬の可否,休薬期間を決定する。原則,アスピリン以外は事前に休薬の上,内視鏡的切除を行う2)。アスピリンも可能な限り休薬する。事前に胃内pHを高めることで出血性偶発症を低減できることから,切除前日より酸分泌抑制薬〔タケキャブ®(ボノプラザンフマル酸塩),パリエット®(ラベプラゾールナトリウム),ネキシウム®(エソメプラゾールマグネシウム水和物)等〕の投与を開始し,切除当日も含めて1カ月程度は服用する。切除翌日に偶発症(主に出血,穿孔,肺炎)を示唆する自他覚症状,バイタルサインの変化,一般血液検査異常等がみられなければ,流動食より食事を再開し,1日ずつ3分粥,5分粥,全粥と食上げし,退院とする。

    ヘリコバクター・ピロリ感染陽性症例では酸分泌抑制薬服用終了後,1カ月以上あけて除菌療法(ボノサップ®パック400等)を実施する。
    切除検体で病理学的根治度評価を行い,経過観察でよいか,外科的切除等を含めた追加治療を要するかの判断を行う。

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